年一度の車検の日、それはもはや仕組み化された行事のようだ。スペインのIT化が進む中、SMSで予約が告げられ、指定されたリンクを開くと、すでに私の車の情報が満載されたページが現れる。日時を選び、クレジットカードの情報を入力すれば、たちまち手続きは完了する。もしもカード払いを好まずとも、請求書をプリントし、銀行で現金を支払う道も残されている。
昔は、期日前に車検場に足を運び、対面での長い手続きを経て、その場で車検を済ませた。時が経ち、ロンダの試験場への電話予約が普通となり、やがてはコールセンターを通じて、そして今やスマートフォン一つで完結する。
受付ではかつては人との会話があり、支払いを済ませ、検査官に渡す紙を受け取ったものだが、今では機械がそれを代行し、ナンバーと予約番号を入力するだけで支払いが完了する。外に設置された掲示板に車の番号が点滅すれば、検査場へ車を赴かせる。
昔は掲示板もなく、車のナンバーと試験場の番号はスピーカーからの音声で知らされた。音質の悪い放送を、不確かなスペイン語で耳を澄ませていたことを思い出す。聞き取れず、周囲の人々の助けを借りたこともあった。それが今では明確な掲示板に変わり、また今年は電気自動車用の充電ステーションも新たに設けられている。
コルテス村に来た二十数年前は、まだ紙とペンの世界だった。今では、恐らく日本をも凌ぐハイテクが公的なサービスにも普及している。毎年、この灼熱の時期に車検に訪れるたびに、スペインの生活が便利になったことを、汗を流しながら感じている。
車検の後は、久しぶりにロンダの街を散策しようと思ったが、熱さに負け、近くの大型スーパーで涼むことにした。昼食前の時間帯ともあり、車が多く、炎天下の屋根なし駐車場に車を停めざるおえず、車内は焼けるように熱くなる。
昼食は、ガソリンスタンド併設のレストランで友人と待ち合わせ。
このレストランは、見晴らしの良い場所に位置しており、スペインでは一般的な「メニュー・デル・ディア」、つまり日替わりランチも提供している。かつては7ユーロから12ユーロの範囲だったメニュー・デル・ディアも、今は10ユーロから15ユーロに値上がりしている。
このレストランにはお肉の炭火焼もあり心惹かれたが、暑さで食欲がわかず、また高い価格もあって、結局メニュー・デル・ディアにした。品質はそれほど高くなく、手頃な価格で美味しいものを食べるのは難しい。
以前、アラカルトメニューで25ユーロ出せば前菜とメインで満足できる料理が食べられたものだが、今は物価高の影響もあり、同じものを食べようとすると50ユーロは必要だ。25ユーロで食べられた頃の日本円は約3,250円だったが、今では50ユーロで8,500円になる。この物価の高騰と円安の組み合わせが、アラカルトでの食事を手が届かないものにしている。だからこそ、ついメニュー・デル・ディアを選んでしまい、美味しくもなく、満足感も得られずに終わる。
コルテス村の行きつけのバルだけが、まだビールが安く、気軽に行ける場所として残っている。しかし、もしもこれが値上がりしたら、やがては家飲みに切り替えざるを得なくなるだろう。スペインでの生活が、ますます意味をなさなくなっていくような気がしている。
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