ペットシッティング2日目です。この日は朝からかなり暑くなりました。
外は暑くても、この家の中は意外と涼しいのですが、それでも天井のファンは一日中回していました。
以前、夏に遊びに来た時には、昼間にファンを回すと「肌寒い」と感じたこともあります。それを思うと、今回は随分暑かったのでしょう。夜、寝る前まで止めることはありませんでした。
朝には、家の中に蜂が2匹入ってきました。
どうしようかと慌てながら殺虫剤を使ったのですが、スプレーがうまく噴射せず、霧ではなく液体がポタポタ落ちてきます。それでも少しは蜂にかかったようで、2匹とも動かなくなりました。
申し訳ない気持ちはありましたが、仕方ありません。
今度は床に落ちた殺虫剤が気になります。犬がよく横になる場所だったので、慌ててきれいに拭き取りました。それ以降、蜂は入ってこなかったので一安心です。
そんな午前中、英会話をしている友人から、この夏に夫婦で出かけたフランス旅行の話を聞きました。
一週間ほどの、なかなか豪華な旅行だったようです。食事も美味しく、添乗員さんも素晴らしく、とにかく大満足だったとのこと。話を聞いているだけでも、随分よい旅だったことが伝わってきました。
私は20代の頃、短い期間ですが国内旅行の添乗員をしていたことがあります。香港へ行く前の話です。
仕事では北海道へ行くことが多く、何度も行ったり来たりしていました。九州方面へ行くこともありました。当時の知り合いの中には沖縄方面の仕事が多く、そのまま離島へ移った人もいたように記憶しています。
私が担当していたのは比較的安いツアーが中心でした。
ただ、旅行という仕事は値段が安ければ楽というものでもありません。お客さんが求めるものはそれぞれ違います。
まして高額な旅行なら、払った金額に見合う満足をしてもらわなければなりません。添乗員さんにも相当な経験と気配りが求められるのでしょう。
友人のフランス旅行には現地ガイドも同行していたそうです。その話から、ヨーロッパの観光ガイドのことを思い出しました。
スペインでは、観光地で団体を案内するにはガイドの資格が必要です。誰でも自由に案内ができるわけではありません。歴史や文化に関する知識も求められます。無資格だと罰金が課せられます。
日本からのツアーを見ていると、日本人の添乗員や案内役とは別に、現地の公認ガイドが一緒について歩いていることがあります。
また、その資格を持つ人がいなければ団体用の手続きができません。
友人の話では、フランスでは現地のフランス人ガイドが説明し、それを添乗員さんが日本語に通訳していたそうです。
スペインで私がこれまで見てきた日本人ツアーでは、日本人の添乗員が説明し、その横に現地公認ガイドが一緒にいる形が多いように感じます。国や場所によってやり方も違うのでしょう。
そんな話をしていて、20年ほど前に父とグラナダへ行った時のことを思い出しました。
アルハンブラ宮殿へ行く予定だったのですが、父が、
「説明を聞かないと分からない」
と言い始めました。
私はガイドブックを見ながら自分たちで回れば十分だと思っていたのですが、父はどうしても日本語で説明を聞きたかったようです。
そこで日本の旅行会社へ電話して、日本語の案内を頼めないか聞いてみました。
ところが、日本人の案内役だけではなく、資格を持つ現地ガイドもつける必要があるとのことで、半日で450ユーロほどと言われました。
当時のレートで日本円にすると5万5千円程度です。
「半日でそんなに払うの?」
と思い、結局父を説得してやめました。
今なら物価も随分上がっていますから、もっと高いのでしょう。さらに円安まで考えると、日本から個人で現地ガイドをお願いするのは相当な金額になります。
当時は今のように、ガイドがマイクを使い、旅行者がイヤホンで説明を聞く方式もまだ一般的ではありませんでした。
大勢の人がガイドの周りに集まって話を聞いていたので、父には、
「近くへ行って、ちょっと聞いておいで」
などと言った覚えがあります。
今ならそんなことはできません。
友人は今回、モン・サン・ミシェルにも行ったそうです。
私はまだ訪れたことがありません。名物のオムレツも食べたそうですが、想像していたものとは随分違ったと言っていました。
「写真撮った?」
と聞いたら、
「撮ってない」
とのこと。
それは撮っておいてほしかった、とこちらが残念になりました。
一方、エッフェル塔には登れなかったそうです。
旅行中にインターネットで調べた時にはまだ空きがありそうだったものの、ホテルへ戻って正式に予約しようとした時には、もう取れなくなっていたそうです。
私は昔、一度だけエッフェル塔へ上ったことがあります。
35年以上も前のことです。クリスマス少し前でした。
不思議なもので、上から見た景色よりも、今でもはっきり覚えているのはエレベーターに乗っていた係員のおじさんです。(今写真を見るとお兄さん^^)
きちんと制服を着ているのに、クリスマス前だからでしょうか、首の周りにキラキラした飾りをつけていました。
その姿が何とも楽しげで、それが妙に印象に残っています。
夜景もきれいだったはずなのですが、そちらはぼんやりしています。
旅の記憶とは、案外そんなものなのかもしれません。
有名な建物や景色より、そこで出会った人の表情や、何でもない瞬間だけが何十年も残ることがあります。
友人の話を聞きながら、初めてヨーロッパを旅した頃のことも思い出しました。
初めてロンドンへ行った時。初めてフランスへ渡った時。船で港を離れていく時の気持ち。
当時は目に入るものがすべて新しく、感動の連続でした。
今はスペインに長く住み、フランスへ行っても同じヨーロッパです。もちろん国が違えば街並みも文化も違いますが、昔のように何を見ても「ああ、すごい」と驚くことは少なくなりました。
ヨーロッパの建物を見慣れてしまったのだと思います。
だからこそ、初めて訪れた友人が楽しそうに旅の話をしているのを聞くと、昔の自分を少し思い出します。
午後は少し仕事をしました。
机に向かっていて、ふと横を見ると、大きな鏡に自分の姿が映りました。
その瞬間、
「これはいかん」
と思いました。
姿勢は悪いし、お腹も随分立派になっています。
夏の間、ビールばかり飲んでいたので、見事なビール腹です。
鏡を見ながら、さすがに少し何とかしなければと思いました。
この家は周りをそれほど気にしなくてもよいので、少し大きめの音で音楽を流しながら仕事ができます。
村の自宅とはまた違う静けさがあります。
ペットシッティングで家を離れていますが、こうしていつもと違う場所で仕事をしていると、ちょっとした一人暮らしの休暇に来たような気分にもなります。
暑さと蜂に始まり、フランス旅行の話から昔の仕事や旅まで思い出した、9月最初の一日でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


