午後になってから、ようやく空が明るくなり、気持ちの良い天気になりました。
昼食を終えてしばらくゆっくりした後のこの時間は、散歩にちょうど良い時間帯です。太陽が裏山に隠れるまで、まだ1時間半ほどあるでしょうか。近所の人たちも同じことを考えているようで、あちこちで歩いている人の姿を見かけます。
スペインの小さな村では、こうした夕方の散歩が日常の風景です。のんびりとした空気の中で、季節の変化を肌で感じることができます。
そんな穏やかな散歩の途中、ふと思い出したニュースがあります。YouTubeで見たもので、ケニアの空港で中国国籍の人が逮捕されたという話でした。理由はなんと、アリの密輸です。何千匹ものアリを国外へ持ち出そうとして捕まったというのです。
最初は「アリ?」と驚きました。ニュースの映像を見ると、アリは試験管のような小さな容器に入れられ、綿のようなものが詰められていました。1つの容器に大量のアリを入れるのではなく、1匹か2匹ずつ丁寧に分けて運ぼうとしていたようです。
一体なぜそんなことをするのか不思議に思い、AIに尋ねてみました。
すると、世界にはアリを飼育し、コロニーが広がっていく様子を観察する愛好家がいるのだそうです。透明な容器の中で、女王アリが巣を作り、働きアリが増えていく。その過程そのものを楽しむのだとか。
珍しい種類になると高額で取引されることもあり、それが密輸の理由になっているようでした。
そういえば、以前Instagramで、アリのコロニーを販売している人を見かけたことがあります。確かシンガポールかどこかの人でした。趣味の世界とはいえ、思いがけないところに価値が生まれるものだと、少し驚かされます。
さらに調べてみると、売買の中心になるのは「女王アリ」だそうです。コロニーを作るのは女王アリだからです。羽を持った女王アリは空を飛び、空中で交尾を行い、その後地上に降りて羽を落とし、新しい巣を作る場所を探します。
スペインのこの村でも、年に一度、不思議な光景を見ることがあります。雨が降った後のある日、大きな羽アリが一斉に飛び立つのです。ははっきり覚えていませんが、多分10月です。その日だけは空がざわめくように感じられるほど、多くのアリが舞います。
そして翌日になると、地面には羽アリの死骸が無数に落ちています。
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| 羽を落としたアリ |
これまで何気なく見ていた光景でしたが、その仕組みを知ると、まったく違って見えてきます。生き残ったメスが新しい場所で巣を作り、そこから新しいコロニーが始まっていくのです。
女王アリは一度の交尾で一生分の精子を蓄え、それを使って働きアリを産み続けるのだそうです。そしてコロニーが成熟すると、再び羽アリを生み出し、その循環が繰り返されていきます。自然の仕組みの巧妙さには、本当に驚かされます。
この辺りには、かなり大きなアリもいます。見かけると、1.5センチ、もしかしたら2センチ近くあるのではないかと思うほどです。
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| アリの巣 |
昔、犬を飼っていた頃、田舎の家で餌を与えていたことがありました。ドッグフードにビスケットを混ぜて置いておくと、それを大きなアリたちが運んでいくのです。
8匹ほどのアリが協力して、大きな欠片を壁伝いに運んでいく様子は見事でした。あの小さな体でどうやって、と感心しながら、しばらく見入ってしまったのを覚えています。
調べてみると、大型のアリにも様々な種類があり、珍しい女王アリになると1匹で2,000ユーロほどすることもあるそうです。本当かどうかは分かりませんが、そんな話を聞くと、アリの世界もずいぶん奥深いものに感じられます。
最近は、こうした疑問をすぐにAIで調べることができます。ふと気になったことに、その場で答えが返ってくるのは、ありがたい時代だと感じます。
そんなことを考えながら歩いていると、今日の天気の良さがいっそう心地よく感じられてきます。
駅の村では、昨日と今日がカーニバルでした。昨日は寒く、天気もあまり良くなかったので、今日は晴れて本当に良かったと思います。やはりお祭りは、青空の下の方が何倍も楽しいものですよね。
ただ、太陽が沈めば、空気は一気に冷え込みます。今は暖かくても、あと少しすればまたジャケットが必要になるでしょう。
ふと見ると、道の向こうにロバがいます。のんびりと立ち、こちらをじっと見ています。
スペインの田舎では、こうした風景もまた、何気ない日常の一部です。
「かわいいね」
思わず声をかけて、手を振ります。
ロバは静かにこちらを見たまま、ゆっくりと耳を動かしていました。
「アディオス」
小さく挨拶をして、また歩き出します。
春がもうすぐそこまで来ている、そんな気配を感じながら、夕方の散歩は静かに続いていきます。





