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【村の行事】2026年
祝日4月3日(金) Viernes Sano、3月29日(日)〜4月5日(日) セマナサンタ

2026/05/15

5月8日(金) いつものバルと地元のチーズ、スペインで出会う何気ない幸せ

金曜日の朝、窓の外を見ると、空は一面の雲に覆われていました。

「今日は晴れるかな」と少し期待していたのですが、残念ながらその気配はありませんでした。

スペインというと青空の印象が強いかもしれませんが、もちろん毎日が絵葉書のような晴天というわけではありません。曇りの日には曇りの日の、少し静かな時間が流れています。

その日は一日、部屋にこもりながら仕事をして過ごしました。外へ出るきっかけもないまま夕方になり、気づけば夜の八時半ごろ。

けれども、スペインの春から初夏にかけての夜は、まだまだ明るいのです。日本の感覚でいう「夜」とは少し違い、外に出るには十分な光が残っています。

「せっかくだから、少し飲みに行こう」

そう思って、いつものバルへ向かいました。

バルに着くと、そこには顔なじみの人たちがいました。イギリス人の友人、オランダ人のカップル、そして地元のスペイン人女性たち。そこに私も加わりまりました。

スペインのバルの良いところは、こうした輪の中にふっと入っていけるところです。特別な約束がなくても、そこに行けば誰かがいて、グラスを片手に話が広がっていきます。

しばらく飲んだ後、ひとりの女性と一緒に、彼女の家へ行くことになりました。彼女の高齢のお母さんが家にいて、親戚の女性も一緒に過ごしているとのことでした。

外で飲み続けるよりも、家に来てもらったほうが、お母さんのそばにもいられるからちょうど良い、ということだったのです。

途中でビールを買い、彼女の家へ向かいました。家では色々なチーズをご馳走になりました。これが本当に美味しかったのです。

ただ、日本でよく食べてきたチーズとは、かなり印象が違います。日本で「チーズ」といえば、かつてはプロセスチーズの味を思い浮かべる人も多かったと思います。

もちろん今では日本でも様々なチーズが手に入りますが、それでもスペインの地方で出てくるチーズには、やはり独特の力強さがあります。

特にこのあたりでは、山羊のチーズや羊のチーズがよく食べられています。牛のチーズはどちらかというとスペイン北部のイメージが強く、地域によって乳の種類も味わいも変わります。山羊や羊が何を食べて育ったのかによって、香りも風味も変わってくるのだそうです。

中には、かなり香りの強いチーズもあります。慣れていない人にとっては、最初は少し抵抗があるかもしれません。けれども、その土地の空気や草の匂いまで含んでいるような味わいがあり、食べているうちに不思議と癖になっていきます。

この日はビールと一緒にいただきましたが、食べながら「これは赤ワインのほうが合うだろうな」と思いました。濃厚で香りの強いチーズには、やはりしっかりした赤ワインがよく合いそうです。

スペインを旅するなら、ぜひその土地のチーズとワインを一緒に試してみてほしいです。観光名所を巡るだけでは味わえない、その土地の暮らしが見えてきます。

その夜は、チーズをつまみながら、色々な話をしました。彼女たちは私より十歳ほど年下だったと思います。でも、年を重ねてくると、十歳の違いなどあまり気にならなくなります。話していて楽しいかどうか、気持ちよく時間を過ごせるかどうかのほうが、ずっと大切です。

ありがたかったのは、彼女たちがとても分かりやすいスペイン語で話してくれたことです。こちらが理解できるように、はっきりと、丁寧に話してくれました。スペイン語を勉強している人なら分かると思いますが、相手が少し気を配って話してくれるだけで、会話の世界はぐっと広がります。

一方で、私が話すときは、お酒が入っていることもあって、細かいことはあまり気にならなくなっていました。文法が合っているか、相手にちゃんと伝わっているか、普段ならあれこれ考えてしまいます。けれども、酔ってくると不思議なもので、そんな不安はどこかへ行ってしまいます。

とにかく話す。

言いたいことを話す。

少しくらい間違っていても、大きな声で話す。

相手が本当に分かっているのかどうかは、正直なところ分かりません。それでも、彼女たちは優しくうなずきながら聞いてくれました。その雰囲気に助けられて、私もますます楽しくなっていきました。

言葉を学ぶうえで、こういう時間はとても大切だと思います。机に向かって勉強することも必要ですが、実際の会話の中で、間違えながら、笑いながら、少しずつ言葉が自分のものになっていく。スペインのバルや家庭には、そんな学びの場が自然にあります。

結局その夜は、本当に楽しい時間になりました。朝から曇り空で、昼間は部屋にこもって仕事をしていただけの一日でしたが、夜に外へ出たことで、まったく違う一日になりました。

やはり、外に出てよかったです。

ただ、帰るころには、また冬に戻ったような寒さになっていました。

曇り空から始まり、いつものバルで人に会い、地元の家でチーズをご馳走になり、拙いスペイン語でたくさん話した金曜日。思いがけず充実した一日になりました。

帰り道の花壇に咲いていました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。