朝9時、久しぶりに散歩に出ました。
公園の中は一面の緑。けれど昨夜降った雨の名残で、地面はまだぬかるんでいます。足元を確かめながら歩くたびに、湿った土の匂いが立ちのぼりました。
朝はまだ雲が残っていますが、このあと晴れていくという予報です。冷たい風が吹いていて、濡れた大地の水分を含んだ空気が体感温度をぐっと下げていきます。葉っぱや折れた枝があちこちに散らばり、嵐の名残がはっきりと残っていました。
空を見上げると、今日も飛行機雲が筋を作っています。
昨日は特に多く見えましたが、Xにはマラガの方からも似た写真が投稿されていて、同じ空の下にいるのだと少し不思議な気持ちになります。こんなに多いのは珍しい気もしますが、何か理由があるのでしょうか。
公園の一角にある古いホテルの前を通りました。
私がこの村に来た頃は、きれいに手入れされ、バルもにぎわっていました。20数年前、こちらで迎えた最初の大晦日。ここで開かれた華やかなパーティーをよく覚えています。大人たちが思い思いにおしゃれをして、新年を祝っていました。
けれどその後、経営は何度か変わり、結局は長いあいだ手つかずのままでした。ところが去年、売却されたという話を耳にしました。村の所有物だったので売られるとは思っていませんでしたが、真相ははっきりしません。
コロナ前には、イギリス人の実業家が長期契約を求めて村役場と交渉していたとも聞きました。もしあの時に改装してホテルを始めていたら、その後のパンデミックで大変なことになっていたでしょう。そう思うと、物事には巡り合わせがあるのだと感じます。
ここ数日晴れていたせいか、足元の野草が驚くほど高く伸びていました。
アーモンドの花も少し咲いていますが、嵐の影響で花びらはすでに散り、今は緑の葉が出始めています。今年は満開の景色は見られそうにありません。
そんな花を眺めながら写真を撮っていたら、近くで車が止まりました。窓ガラスがすっと下がり、そこにいたのはブライアンでした。
村にホリデーハウスを持っているイギリス人のご夫婦のご主人です。そして奥さんが、つい先日のクリスマスの頃に亡くなったのだと教えてくれました。
奥さんは小柄で明るく、とてもよく話す人でした。二度目の結婚で、子どもたちも含めて賑やかな家庭を築いていました。数年前にアルツハイマーを患い、最後に会ったときは、歩くにも介助が必要な状態でした。それでも私のことを覚えていてくれたのが、今も胸に残っています。
70代前半だったと思います。あの状態が長く続くよりも、本人にとっては安らぎだったのかもしれません。
お二人とは昔、夜11時半から朝方まで開いていたバルで、よく一緒に飲みました。
当時私はそのすぐ近くに住んでいて、酔っても50メートル歩けば家。12時頃に行き、気づけば3時や4時。そんな夜を何度も過ごしました。村の中で顔なじみが集まり、自然と同じ店に吸い寄せられていた頃です。
日本から来ていた若い旅行者の女性が、二人の様子を見て「将来あんな夫婦になれたらいいな」と言っていたのを思い出します。本当に仲の良いご夫婦でした。
こうして一人ずつ、知っている顔がいなくなっていきます。
それは寂しいけれど、避けられない流れでもあります。それでも、最後にまた会えたことが、私にとっては救いでした。
アーモンドの花を見ながら、そんなことを思いました。
散歩の後、隔週の木曜日に開かれるマーケットをのぞきました。まだ全部のお店が出ているわけではありませんでしたが、色鮮やかな野菜が並んでいます。
けれど今日は買わずに、村の八百屋さんで買うことにしました。やっぱり地元のお店を支えたいのです。
その足で郵便局へ行くと、ロンダから車通勤している局員さんの姿がありました。崖崩れの影響で道が閉鎖されていましたが、ようやく通れるようになったのです。工事をしてくださった方々に、心から感謝します。
三週間ぶりに会う局員さんと挨拶を交わし、こうやって日常が少しずつ戻ってくることに安堵しました。
ふと見上げると、朝の雲はいつの間にか薄れ、淡い青空が広がり始めていました。湿った風の冷たさの中にも、確かな光が差しています。季節も、暮らしも、静かに前へ進んでいるのだと感じた朝でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。








