3月も半ばを過ぎ、冬の終わりを感じる日が増えてきました。
この日は空一面が雲に覆われていたものの、寒さはそれほどでもなく、厚手のコートを着る必要はありませんでした。家の中でもガスヒーターをつけると少し暑く感じるほどで、季節の移り変わりを実感します。
そんな穏やかな一日の中で、ふと日本のニュースが目に入りました。修学旅行中の痛ましい事故についての報道です。それをきっかけに、スペインの学校行事について改めて考えました。
スペインでも、小学校や高校の節目に旅行へ行く習慣があります。いわゆる修学旅行のようなものですが、その準備の仕方は日本とは少し異なります。
たとえばクリスマスの時期になると、子どもたちがチョコレートやお菓子を販売します。家族や地域の人たちがそれを買い、その売り上げを旅行費用として積み立てていくのです。さらに、お祭りの際には保護者が臨時のバルを出し、その収益を充てることもあります。
もちろん最終的には各家庭の負担もありますが、それだけではなく、地域全体で少しずつ支えていく仕組みが自然と根付いています。
こうした背景から見えてくるのは、「子どもたちの経験はコミュニティで支えるもの」という考え方です。単なる学校行事ではなく、地域に開かれたイベントでもあるのです。
一方で、スペインで生活していると強く感じるのが、「身分証明」の重要性です。
スペインでは、国民にはDNI(国民ID)、外国人居住者にはNIE番号とそれに紐づくカードがあり、この番号が生活のあらゆる場面で必要になります。医療、契約、行政手続きなど、ほとんどすべてがこの番号に紐づけられています。
名前だけでは不十分で、「個人を特定できること」が前提となっている社会です。
例えば、子どもを学校へ迎えに行く場合でも、誰が迎えに行くのか事前に登録し、その人物の身分証明が求められることがあります。
実際に、友人の高校生の娘さんを迎えに行くよう頼まれた際には、事前に私のID番号を伝え、当日も提示が必要でした。スペインでは同じ名前の人が多いこともあり、こうした確認はとても現実的な仕組みだと感じます。
また、友人の話では、10代前半でIDを取得したと言っていました。サッカーの遠征で他の町へ行く際に、身分証明が必要だったそうです。
(※スペインではDNIの取得は義務ではあるものの、取得時期は家庭や必要性によって多少の違いがあります)
日本では比較的柔軟に対応される場面でも、こちらでは明確なルールが存在します。
団体での移動やイベントについても同様で、学校や団体が主催する場合には保険加入や許可が前提となっており、責任の所在がはっきりしています。
こうした仕組みを見ていると、スペインでは「ルールがあるから守る」というよりも、「守らせるためにルールを明確にする」という考え方が強いように感じます。
この違いは、言葉の使い方にも表れているように思います。
日本では「〜してください」と丁寧に依頼する表現が多く使われますが、スペインでは安全や規則に関する場面では命令形が一般的です。たとえば飛行機の安全案内なども、「お願い」ではなく「守るべき指示」としてはっきり伝えられます。
これは、専門性や責任に基づいたコミュニケーションの違いとも言えるかもしれません。
スペインで暮らしていると、自由でおおらかな印象を受ける一方で、このように制度やルールの面では非常に明確で現実的な側面も見えてきます。
一見すると相反するようにも思えるこの二つが共存しているところに、この国のバランスの面白さがあるのかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
