朝から空はどんよりと曇っています。今にも雨が降り出しそうな空模様です。昨日も同じように「そろそろ降るのでは」と思いながら歩いていたのですが、結局雨は落ちてきませんでした。
天気予報では今日も一日曇り。そして明日からは数日間、雨が続くようです。
金曜日の夜からは村のカーニバルが始まるので、そのころだけでも天気が持ってくれたらいいのですが。
午前10時ごろ、散歩に出ることにしました。
さっきまで風が強く、外に出るのをやめようかとも思っていたのですが、いざ家を出てみると風はぴたりと止んでいます。まるで、さっきまでの風が嘘のようです。
風がなければ、曇り空でもそれほど寒くありません。とはいえ、まだ冬。厚手のジャケットを着て歩きます。
道の途中には、先日の嵐の名残がいくつも残っていました。
ひっくり返って壊れたゴミ箱や、折れてしまった木の枝。
普段は気づかない場所でも、自然の力がどれほど強かったのかがよくわかります。
今日はキャンピングカーも一台も止まっていません。天気のせいか、村はとても静かです。
歩きながら、ふと世界のニュースのことを考えていました。
最近は中東の情勢がまた緊張していて、ガソリンの値段も上がるかもしれないと言われています。
どうして人は、こうも争ってしまうのだろう。
そんなことをぼんやり考えながら、静かな村の道を歩いていました。
私はこの村に、日本人ひとりで暮らしています。
旅行で訪れる人には、「ひとりで住んでいるんですか?」と驚かれることがよくあります。
でも実際には、それほど不便は感じません。
一つは、今の時代にはインターネットがあること。これがなければ、さすがに難しかったかもしれません。
そしてもう一つは、周りの人たちに恵まれていることです。
村の人たちはとても親切で、都会のような危険もありません。
この辺りにはイギリス人も多く住んでいます。以前ほどではありませんが、それでもかなりの数がいます。ただ、人が集まれば、やはり色々な揉め事も色恋沙汰も起きるものです。
けれど、私はその中に深く入っているわけではありません。
スペイン人のグループでもなければ、イギリス人のコミュニティの一員でもない。いわば、外から少し関わっているだけの存在です。
だからこそ、皆が親切にしてくれるのかもしれません。
そして、その距離感が私にはちょうどいいのです。
他の村には日本人の方もいると聞きます。実際、紹介されたこともありました。「日本人がいるから電話してみたら?」と、わざわざ番号を教えてくれたこともあります。
でも、日本人だからといって気が合うとは限りません。
お互いに「まあ、機会があれば」というくらいの距離で終わることが多いものです。
以前、近くの村に住む日本人の方と親しくしていたこともありましたが、それも共通の分野があったからこそでした。その彼らも他と国へと移っていきました。
やはり人とのつながりは、国籍よりも価値観や興味のほうが大きいのかもしれません。
人と関わると、私はつい相手に合わせようとしてしまいます。それが長く続くと、だんだん苦しくなってしまうのです。
香港に住んでいた頃、とても優秀で行動力のある友人がいました。ビジネスでも成功していて、自分のやりたいことをはっきりと貫くタイプの人です。
一度、いや二度、一緒に旅行をしたことがありました。
でも彼女は自分のペースを崩さない人で、私はついそれに合わせようとしてしまう。気がつくと、だんだんと疲れてしまいました。
「もう二度と一緒に旅行はしないかもしれない」
そんなことを思ったのを覚えています。
成功する人というのは、やはり自分のやりたいことを強く押し通していく人なのかもしれません。人のことばかり気にしていては、大きなことはできないのでしょう。
ふと考えることがあります。
昔は同じような場所に立っていた人たちが、気がつけばまったく違う人生を歩いている。
自分の力で大きく成功した友人。
豪邸に暮らしている友人。
夢を叶えて作家になった友人。
ファッション関係の仕事でパリにいる友人。
そして私は、この小さな村で静かに暮らしています。
素敵な村なのでラッキーとも言えるのですが、ときどき、こんな生活でいいのだろうかと落ち込むこともあります。
この村に私が来た頃、ここにはアルゼンチンから来た人たちがたくさん住んでいました。ユーロが導入され、スペインが建設ラッシュだった時代です。アルゼンチンの経済危機もあり、多くの人が仕事を求めてやってきていました。
若い家族が多く、村はとても活気がありました。夜になると皆で集まって飲んだり、踊ったりしていたものです。
イギリス人の若い家族もたくさん住んでいました。
あれからもう20年。
多くの外国人がこの村を離れていきました。
イギリス人の家族も、子どもが中学生くらいになると本国へ戻ることが多く、少しずつ人の顔ぶれも変わっていきました。
そして当時小さかった子どもたちは、今では25歳くらいになっています。親たちも年を取り、あの頃のようなパーティーはなくなりました。
新しい人が来て、また別のコミュニティができる。
そんな流れの中で、私はずっとこの村にいるのです。
午後になると、村ではカーニバルの飾り付けが始まっていました。通りに色とりどりの飾りが吊され、少しずつお祭りの雰囲気が出てきています。
そんな中、道で会った女性に「オラ」と挨拶をしました。
けれど返事はとても小さな声で、どこか冷たい表情でした。
この村にも、もちろん色々な人がいます。中には、どうも私のことがあまり好きではなさそうな人もいるのです。
日本人たった一人としてここで暮らしていると、こういうことも時々あります。それでも、ほとんどの人は優しく接してくれます。
だから私は、これからもこの村で、少し外側から皆と関わりながら、静かに暮らしていくのだと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





