この日は一日中家にいて、仕事をしていました。来週は車検があるため、夕方になってから車を少し動かすことにしました。時刻は午後8時ごろでしたが、夏のスペインではまだ十分に明るい時間です。
遠くまで行くつもりはなく、村の外れにある学校まで走り、そこから谷の下にある駅の村へ降りました。再び坂道を上って戻ってくるまで、全部で25分ほどです。短い距離でしたが、あまり動かしていない車には、ちょうどよい運転になりました。
そのまま家には戻らず、ガソリンスタンドの隣にあるバルへ寄りました。そこで、久しぶりに友人のベロニカに会いました。
彼女は、援助を必要とする人たちのために、幾つかの村を回ったりする公的な仕事をしています。高齢者と接することが多いようですが、正確な職種については、私はよく分かっていません。
話を聞いていると、彼女は今、自分の職場を安定させるための試験に向けて勉強しているそうです。スペインでは、公的機関に関係する仕事に就く際、安定した職を得るために試験を受けなければならないことがあります。
学校の先生も同じような仕組みです。正式な職を得るまでは一年ごとの契約で働き、アンダルシア州内のどこへ配属されるか分からないこともあります。新学期の直前になって赴任先を告げられ、慌てて引っ越す人もいるそうです。
ただし、臨時職員として働いた経験は点数として加算され、後に試験を受ける際に有利になります。経験を積みながら何度も試験を受け、最終的に希望する地域の安定した職を目指すのです。
ベロニカも毎年のように試験を受けていて、今年は三次試験まで進んだと話していました。仕事をしながら勉強を続けるのは大変そうです。それでも、この日は金曜日でした。久しぶりに会ったこともあり、勉強のことは少し忘れて、一緒に飲みながら話をしました。
しばらくすると、ほかの友人たちも集まってきました。日が暮れ始めた午後9時半から10時ごろ、今度はフライドチキンを出す別のバルへ移動することになりました。
そこには、友人の息子さんがいました。父親がイギリス人、母親がスペイン人です。ワールドカップでイングランドが敗れたばかりだったので、「残念だったね」と声をかけると、「その話には触れないでくれ」と言われました。
冗談めかしてはいましたが、本当に落ち込んでいるようでした。「まだ立ち直れない」「悲し過ぎる」と何度も話します。スペインにもつながりがあるので、残った試合をどこで見るのか尋ねると、家で一人で見るとのことでした。日曜日のスペイン戦も、翌日から仕事があるため、やはり自宅で見るそうです。
それでも、心から優勝してほしかったのはイングランドだったのでしょう。長い間優勝から遠ざかっていただけに、今回は大きな期待を寄せていたようです。
その様子を見ながら、日本のサッカーファンとの違いについて考えました。
日本代表が敗れたとき、私たちは「よく頑張った」「素晴らしい試合だった」と選手をたたえることが多いように思います。もちろん、それは悪いことではありません。私自身も同じように感じます。
一方、サッカーの強豪国では、代表チームが敗退すると、その後の大会にはほとんど興味を示さなくなる人もいます。以前、スペインが早い段階で敗退したときも、周囲では「スペインのワールドカップはもう終わった」と言う人が少なくありませんでした。ほかの国の試合を見る気にはならない、というのです。
代表が勝つことを強く信じているからこそ、敗れたときの落胆も大きくなります。
日本代表がさらに強くなり、勝つことへの期待が今以上に高まれば、日本のファンもいつか「よく頑張った」だけでは気持ちを収められなくなるのかもしれません。
友人の息子さんが、本気で悲しそうにイングランドの敗戦を語る姿を見ながら、そんなことを考えた夜でした。

