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【村の行事】2026年
祝日4月3日(金) Viernes Sano、3月29日(日)〜4月5日(日) セマナサンタ

2026/05/13

5月5日(火) 5月のスペイン、冬に戻った夜と断水の一日

朝、散歩に出た時には空が明るく、空気もずいぶん暖かく感じました。春というより、少し初夏に近いような陽気です。

薄めの服装に、上からジャケットを羽織るくらいでちょうどよく、「今日はこのまま暖かい一日になるのかな」と思っていました。

ところが、山あいの村の天気は、そう簡単には読ませてくれません。昼のあいだはまだよかったものの、太陽が山の裏に隠れると、空気が一気に冷たくなりました。夜になるころには、まるで冬に戻ったような寒さです。

5月とはいえ、まだ油断できません。春のスペイン、とくに内陸部や山の近くでは、昼と夜の体感温度が大きく変わります。旅行で訪れる場合も、昼間の陽射しだけを信じて薄着で出かけると、夕方以降に驚くことがあります。少し厚手の上着は、やはり持っていたほうが安心です。

そんな不安定な天気に加えて、この日は村でちょっとした出来事がありました。断水です。

実は前の晩、夜中に水の出が悪くなっていることに気づきました。水圧が弱いな、と思っているうちに、とうとう水が止まってしまったのです。どうしたのだろうと思い、村役場のWhatsAppを確認しました。

こちらでは、村の大切なお知らせがWhatsAppで届くことがあります。そこには、水を送るための電気系統で火事があった、というような案内が出ていました。復旧に向けて作業しているとのことでしたが、いつ戻るのかは分かりません。

小さな村で暮らしていると、こういう時に「ああ、村だな」と感じます。もちろん不便ではありますが、役場からのお知らせがWhatsAppで回ってくるところには、どこか今どきの生活感があります。

かつてはスピーカーからお知らせが流れて村に響き渡っていました。

翌朝になると、水圧は弱いものの、水は出るようになっていました。少しほっとして、いつものように散歩へ出かけました。

そのついでにスーパーへ行くと、いつもより多くの人が水を買っていました。大きなペットボトルを何本も抱えている人たちを見て、「あれ、やっぱりまだ安心できないのかな」と思いました。

とはいえ、家には一応5リットルのボトルがあります。まあ大丈夫だろう、と考えて、その時は買わずに帰ってきました。ところが、こういう時の「まあ大丈夫」は、たいてい大丈夫ではありません。

家で朝食を食べ終え、「さて、洗い物をしようかな」と思って台所に立ちました。食器に洗剤をつけて洗い、さあすすごう、というその瞬間です。水が止まりました。

これは、なかなかがっくりきます。洗う前ならまだあきらめもつきますが、洗剤まみれの食器を前にして水が出ないというのは、なんとも中途半端で困ります。しかも、ただ待っていればすぐ戻るのか、何時間もかかるのかも分かりません。

結局、水が普通に出るようになったのは夜の8時ごろでした。朝から夜まで、ほとんど水が使えない一日です。普段は蛇口をひねれば当然のように出てくる水ですが、止まってみると、そのありがたさが身にしみます。

こうなると、家だけでなく、村のバルも大変だったと思います。飲み物を出せばグラスを洗わなければなりませんし、コーヒーを淹れるにも、厨房を動かすにも水が必要です。手洗いひとつ取っても、水が止まるとできることが一気に限られてしまいます。

スペインの村では、バルはただ飲食をする場所ではなく、人が顔を合わせる日常の場所でもあります。

いつものようにコーヒーを飲みに来る人、一杯だけ飲んで帰る人、店の人と少し話す人。そういう小さな流れが、水が止まるだけで途切れてしまうのだと思うと、断水は家の中だけの問題ではないのだと感じます。

水が出ない日、バルはどう営業するのでしょうか。ボトルの飲み物だけにしたり、簡単な提供に絞ったり、店によって工夫していたのかもしれません。旅行中にこういう日に当たると驚くと思いますが、小さな村では、こうしたトラブルもどこか日常の一部として受け止められているように見えます。

夜になって水は戻りましたが、寒さはそのままでした。本当は、少し飲みに出ようかなとも思っていました。バルで一杯飲む時間は、暮らしの中の小さな楽しみです。でも外は寒く、出かける気持ちはすっかりしぼんでしまいました。

そういえば昨夜は、家で少し飲んでしまいました。「ドン・シモン」という、紙パックに入った安いワインがあります。

スペインのスーパーではよく見かけるもので、どちらかというと料理用に買うようなワインです。以前は大きな紙パックの印象が強かったのですが、最近は100ミリリットルくらいの小さなサイズに分かれたものも売られています。

それを、料理用に買っていたのです。あくまでも料理用です。

ところが昨夜、「やっぱり少しだけ飲もうかな」と思って、飲んでしまいました。今日になってからも、「あんな安いお酒を飲んで、体にいいわけがないのに」と思いながら、少し反省しました。

家には、できるだけお酒を置かないようにしています。置いてあると、つい飲んでしまうからです。それなのに、料理用に買ったはずのワインにまで手を出してしまうと、「これはもう、まさしくキッチンドランカーではないか」と自分で苦笑いしてしまいます。

それでも、寒い夜に外へ出る気になれず、家の台所で紙パックのワインを見つめてしまう気持ちも、少しは分かってしまいます。

スペインの暮らしというと、青い空、明るい広場、陽気なバルを思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、それも本当です。

けれど実際の毎日には、冬に戻ったような5月の夜があり、突然の断水があり、洗剤のついた食器を前に立ち尽くす時間があります。そして、料理用に買った安いワインに、つい手が伸びてしまう夜もあります。

そんな一日も、過ぎてみればこの村らしい日常のひとつです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。