この日は朝早く目が覚めました。昼から出かける予定があったため、その前に少しだけ仕事を済ませました。
ここ数日は暑い夜が続き、アイスノンを抱えて眠ることもありましたが、昨夜はそこまで暑くありませんでした。南スペインの夏でも、夜の気温が少し下がるだけで、随分と眠りやすく感じます。
昼からは、友人のカルメンの家へ向かいました。今、二人で進めている古い手紙のデジタル化作業をするためです。
手紙は、カルメンの祖父から祖母へ送られたものです。手書きの原本だけでなく、亡くなったカルメンの叔母さんがタイプで書き起こしたものも残されています。
タイプされた文章は手書きより読みやすいものの、文字が薄くなっている部分があり、簡単には判読できません。まず手紙の写真をChatGPTに読み取ってもらい、その結果と原本を照らし合わせながら、一行ずつ確認していきました。
カルメンが原本を読み、私は画面に表示された文章を見ながら、「ここは違う」「この単語ではない」と修正していきます。AIでも読めない箇所はあるため、結局は最初から最後まで、二人で丁寧に確認しなければなりません。
カルメンは英語を母語としています。スペイン語は話せますが、文章を声に出して読むと、時々英語らしい発音になることがあります。
一方、日本語の母音は「あ・い・う・え・お」と音がはっきりしています。日本人はローマ字を読む感覚でスペイン語を発音できるため、会話力とは別に、文字を読むだけならスペイン語に近い音を出しやすいのかもしれません。カルメンが読み間違えた箇所を私が直すと、「ああ、本当だ。違うね」と笑うこともありました。
ただし、カルメンは読みながら手紙の内容まで理解しています。文章の意味が分かるたびに、「今のところ、分かった?」と私に説明してくれます。
手紙には、家族との別れや当時の厳しい生活が書かれています。カルメンは読み進めるうちに、「かわいそうに」と感情を動かされることもあります。
私はその場では、スペイン語の意味よりも文字と音を追うことに精一杯です。カルメンが胸を打たれている隣で、私は「まだ意味は分からないけれど、とにかく正しく読まなければ」と、黙々と文字を拾っていました。
同じ手紙を見ていても、一人は内容を受け止め、もう一人は文字を確認しています。二人の役割は違いますが、それがかえって作業を進める助けになっています。
作業を終えた後は、ガソリンスタンドの横にあるバルへ行きました。顔見知りが何人か集まっていたので、その輪に加わり、少し飲んでから家に戻りました。
古い手紙の文字を追い、遠い時代に生きた家族の声に触れた後、いつものバルで知り合いたちと過ごす。静かな作業と賑やかな時間が同居した、月曜日の一日でした。
