この日は夕方、友人から連絡があり、久しぶりにプールのバルへ飲みに行きました。
その友人と知り合ったのは、もう15年ほど前になります。両親がこの村に家を持っていたことから、以前は時々遊びに来ていました。父親はフランス人、母親はスペイン人で、本人はスペイン北部の出身です。
その後、この村に2年ほど暮らし、中学校で教師をしていた時期もありました。スペインの学校には「Filosofía(哲学)」という授業があり、学校によっては宗教の授業との選択になるそうです。彼はその哲学を教えていました。
ただ、哲学教師の職はなかなか見つからなかったようで、その後はマドリードの私立学校へ移りました。フランス語はほぼ母語なので、そこでフランス語を教え、現在は中学・高校で哲学を教えています。
少し前には、7歳と10歳くらいの息子さん二人を連れて村に来ていました。今は子供たちがお母さん側の家族と一緒に過ごしているため、今回は一人で戻ってきたそうです。「少しゆっくりできる」と笑っていました。
そんな彼と話しているうちに、先日のフランス旅行の話になりました。
私がフランスで印象に残ったことの一つが、人々の静かさです。もちろん皆、普通に会話はしています。それでも声が必要以上に大きくなく、子供たちも大声で騒いでいることが少ない。スペインから行くと、その違いがかなりはっきり感じられます。
すると彼も、日本へ行った時のことを話してくれました。
駅で小学生くらいの子供たちの団体を見かけたそうです。大勢いるのに静かに電車に乗り、車内でもほとんど騒がず、そのまま降りていったことが強く印象に残っていると言います。
フランスの静けさは言語の音の関係があると思います。話し声が静かなのです。
日本が静かなのは、電車の中などでは話をしないし、公共の場では小声で話すからだと思います。
一方、スペインでは大人も子供もよくしゃべります。声も大きく、子供たちは元気に走り回っています。それが悪いという話ではなく、国によって「普通」の音量がこれほど違うのがおもしろいのです。
彼がマドリードの私立学校で教えていた頃には、年に一度、生徒を連れてフランスへ行く学校行事もあったそうです。女子校だったこともあり、生徒たちはかなり賑やかだったとか。レストランや店で「もう少し静かにしてください」と注意されることもよくあったそうです。
「私立学校でもそうなの?」
と聞くと、「そうそう」と笑っていました。
そんな話をしながら飲み、少しつまんで、のんびりした夕方を過ごしました。
今はまだ息子さんたちが小さいため、彼もなかなか自分の時間を作れないようです。それでも、あと5年ほどすれば状況も変わってくるでしょう。「今の時間も楽しんでね」というような話をしました。
彼はとても知識が豊富で、哲学を教えているだけあって話題も幅広い人です。それでも私と話す時には、私にも分かるようなスペイン語を選び、一生懸命説明してくれます。
難しい話でも置いていかれる感じがありません。
スペイン語でこんな会話ができるようになったことも嬉しいですし、国による文化の違いを、それぞれの経験を持ち寄って話せる時間も楽しいものです。
いつものプールのバルで飲んだだけの夕方でしたが、なかなか中身の濃い時間になりました。

