今朝は雲海が広がっていました。
この日の夕方、友人から「飲みに行かない?」と誘われ、いつもの場所へ出かけました。村で暮らしていると、こういう何気ない誘いが日常の一部になっています。
特別な予定というほどではありませんが、夕方に少し外へ出て、顔なじみの人たちと話す時間は、こちらでの暮らしらしい過ごし方のひとつです。
店にはすでにオランダ人のカップルが来ていました。さらに、スペイン人の友人も二人加わり、ほどよい人数でのんびりとした時間になりました。にぎやかすぎるわけでもなく、静かすぎるわけでもなく、ちょうどよい空気です。
気温も、春の夕方らしく過ごしやすいものでした。とはいえ、私はかなり寒がりなので、最後には冬用の厚いジャケットを着ていました。
ところが周りを見渡すと、男性の中には半袖で平気そうにしている人もいます。同じ場所にいても、感じ方は人それぞれです。スペインの春は日中こそ暖かくても、日が落ちると急に空気が冷えることがあります。
旅行で訪れるなら、この時期でも羽織るものを一枚持っておくと安心だと思います。
そんなふうに友人たちと過ごしたあと、家へ向かって歩いて帰りました。村の夜道は、昼間とはまた違った静けさがあります。店の明かりや人の声が少しずつ遠ざかり、足音だけが聞こえるようになると、一日の終わりをゆっくり感じます。
そして家の近くまで来て、角を曲がった瞬間でした。南の方角だったと思います。目の前に、満月がぱっと現れたのです。
思わず立ち止まりたくなるほど、きれいな月でした。空にぽっかり浮かんでいるというより、こちらへ向かって大きく現れたような感じです。明るく、丸く、夜の空気の中で静かに光っていました。
この村にいると、月がとてもよく見えます。理由は単純で、空が広いからです。高い建物がほとんどないので、視界を遮るものが少なく、夜空が大きく開けています。満月の夜などは、その広さをいっそう感じます。
以前住んでいた香港では、こうはいきませんでした。高層ビルが立ち並ぶ街では、空は建物と建物の隙間から少しだけ見えるものでした。まるでビルの林の中にいるようで、見上げても空の一部しか目に入りません。月が出ていても、気づかないことも多かったように思います。
それに比べると、今いる場所では、空が大きく広がっています。感覚としては、目の前に180度の空があるようです。昼間の青空も気持ちがよいですが、夜になって月が出ると、その広さがまた別の美しさになります。
友人たちといつもの場所で飲み、帰り道に満月を見る。ただそれだけの夜でした。けれど、そういう何でもない時間の中に、ふと心に残る景色があります。
スペインの田舎で暮らしていると、特別な観光地へ行かなくても、こうした瞬間に出会うことがあります。広い空、静かな夜道、そして角を曲がった先に突然現れる満月。そんな小さな驚きに包まれた、春らしい一日の終わりでした。



