朝は、セビリア中心部にある老舗のお菓子屋さんに入りました。ショーケースには甘いものが並んでいましたが、その横にカフェコーナーがあり、コーヒーとサンドイッチを注文しました。
サンドイッチは野菜入りで、見た目はなかなか良かったのですが、野菜の水分がパンに少し染みていました。それでも、二人で半分ずつ食べるにはちょうどよい量です。旅先では、少しお腹に入れるくらいの軽い朝食が、かえって心地よく感じることがあります。
その後は、ショッピング通りを少し歩いてから川を目指しました。
橋を渡ると、そこはトリアナ地区です。トリアナに住んでいるローラの家へ向かいました。セビリアの中心部とは違い、トリアナには独特の空気があります。川を渡るだけで、町の雰囲気が少し変わるように感じられるのです。
観光客ももちろんいますが、中心部ほど多くはありません。まだ地元の人たちの暮らしがしっかり残っていて、歩いているだけでも落ち着く地区です。
ローラの家に着くと、手作りのガスパチョを一杯出してくれました。これから暑い季節に向かうスペインでは、ガスパチョがますますおいしくなる時期です。
「飲みに行く前に、ビタミンを取らないと」というローラの心遣いでした。外食が続く旅の途中では、野菜の味がする一杯がとてもありがたく感じられます。
少し休んだあと、近くのバルへ向かいました。
ここで食べたのが、私の大好きな「コキーナ」という小さな貝です。ウエルバの方から来るそうで、シンプルですが、貝のうまみがしっかりあります。
そして「トルティージャ・デ・カマロン」も食べました。小エビを使った料理で、日本の小エビのかき揚げを、薄く平べったくしたようなものです。とてもおいしかったのですが、残念ながら写真を撮るのを忘れてしまいました。
トリアナは、セラミックでも知られている地区です。ローラが知り合いの店があると言うので、次のバルへ行く前に、その陶器の店にも立ち寄りました。
店には、タイルや小物など、いかにもトリアナらしい色合いの品物が並んでいました。私はそこでコースターを買いました。それから、開けたワインボトルに使う栓も買いました。
旅先では、大きなものはなかなか買えません。けれど、こういう小さなものなら持ち帰りやすく、あとで使うたびにその町を思い出せます。実用品でありながら、旅の記憶にもなるところがいいなと思います。
次に寄ったのは、市場の横にあるバルです。
ここでは、ボケロネス・フリートスを食べました。片口イワシのような小さな魚のフライです。前の晩には、酢漬けにしたボケロネスを揚げたものを食べましたが、こちらは酢漬けではなく、そのまま揚げたものでした。
トルティージャも食べました。一緒に旅行している友人がそれをナイフで切っていたら、ローラの夫さんが驚いたような顔でじっと見つめていました。まるで「そんな切り方をしたら、トルティージャがかわいそう」と言っているようでした。こういう何気ない食べ方の違いにも、その国らしさが出るのだと思います。
次に向かったのは、セビリアのチームのベティスのファンクラブのような場所にあるバルでした。スペインでは、サッカーチームへの愛着が暮らしの中に自然に入り込んでいます。こうした場所に来ると、観光地としてのセビリアとはまた違う、地元の顔が見えてきます。
そこで「カラコレスを食べるか」と聞かれました。カラコレスとはカタツムリのことです。セビリアでは、小さなカタツムリをコンソメのようなスープで煮込んだ料理としてよく食べるそうです。
せっかくなので一皿もらいましたが、出てきた量が思ったより多く、見た目にもかなり迫力がありました。カタツムリが角を出しているので、私はあまりじっと見ることができません。
食べる時は、爪楊枝を使って中身を取り出します。ただ、慣れている人はそのまま吸って食べるそうです。私たちは少しだけ食べて、残りは一緒にいた人たちにお譲りました。
その後、川沿いにある別のバルへ行きました。
そこでは、フラメンコそのものではありませんが、フラメンコに近い雰囲気の歌のライブがありました。ライブが始まると、すぐにセビジャーナスが流れ始めました。
すると、まわりの人たちは当然のように踊り出しました。誰かが特別に準備していたわけではありません。セビジャーナスの音楽が流れれば、自然に体が動く。そういう空気が、そこにはありました。
こういう場面を見ると、セビリアという町に根づいている文化の深さを感じます。踊りは舞台の上だけにあるものではなく、バルの中にも、日常の中にもあるのだと思いました。
夜10時ごろになり、そろそろ宿泊先の方へ戻ることにしました。
ローラと別れて、タクシーを拾い宿に向かいます。
宿の近くには大きな広場があり、その周りにはたくさんのバルが並んでいます。金曜日の夜ということもあり、人がとても多く、広場全体がにぎやかな空気に包まれていました。
少し歩くと、まだ小腹が空いていることに気づきました。近くにはラーメン屋がありました。日本人がやっている店ではありませんでしたが、ラーメンなら中国系の店でも悪くないかもしれない、と思いました。
ところが、その向かいにインドカレーの店があったのです。見てみると、本当にインドの人がやっている店のようでした。結局、ラーメンではなくインドカレーを選びました。
これがとてもおいしかったです。スペイン旅行中にインドカレーを食べるというのも少し不思議ですが、旅の夜には、こういう予定外の選択が案外よい思い出になります。
カレーとライスとナン。やはり、どこか落ち着く組み合わせです。
食事を終えて宿に戻り、そのまま寝ることにしました。
ただ、この宿は音が少し気になる場所でした。ドアや窓は新しくなっていて、密閉性が高そうに見えたのですが、外の音はかなり聞こえてきました。
広場の近くということもあり、夜中の3時、4時ごろまで人の声や物音が続いていました。
さらに、その後は清掃の車が来ました。水を流しながら道を掃除する車で、その音もかなり響きました。
金曜日の夜のセビリアらしいにぎやかさではありますが、音に敏感な人には少し難しい宿かもしれません。
朝のコーヒーから始まり、トリアナのバル、陶器の店、ベティスのファンクラブ、カラコレス、セビジャーナス、そして最後はインドカレー。振り返ってみると、何か大きな観光名所を巡ったわけではないのに、とても濃い一日でした。
地元の友人について歩いていると、ガイドブックだけでは分からないセビリアに出会えます。何を食べるか、どの店に入るか、どこで足を止めるか。その一つひとつが、その町で暮らす人の感覚につながっているようでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
















