朝起きて外を見ると、空には雲が多く、ところどころに青空がのぞいています。太陽が顔を出したかと思えば、すぐに雲に隠れてしまう。そんな落ち着かない空模様でした。
天気予報を見ると、「みぞれのような雨が降る可能性があり、かなり冷え込む」と書かれています。ここ数日ずっと天気の悪い日が続いているので、そろそろ晴れてほしいと思っている人も多いのですが、どうやら今日も期待できそうにありません。
時計を見ると、まだ午前9時半。
外へ出てみると、空気は刺すように冷たく、手がかじかむほどの寒さです。春に向かっているはずなのに、まるで冬が戻ってきたようでした。
それでも周りを見渡すと、季節は確実に動いています。花は少しずつ咲き始め、あちこちから鳥の声が聞こえてきます。寒さの中にも、どこか春の気配が混じっているのがわかります。
不思議に思ってLINEのメッセージを見返してみると、今週は休みで、レッスンは来週からでした。完全に勘違いしていたのです。
それならばと、気持ちを切り替えて散歩に出ることにしました。こういう日は、歩きながら一日を始めるのが一番です。
外に出ると、村はとても静かでした。
小学校は登校時間帯には音楽が流れます。今日はたしか、ラヴェルの「ボレロ」が聞こえていました。
今はもう授業が始まっているので、音楽も止み、車も通りません。
私が立っている場所では、鳥の声しか聞こえないほどです。普段は多少車が通る道なので、こんなに静かなのは少し珍しいことでした。
この静けさの中にいると、ふと昔の出来事を思い出しました。
15年ほど前のことです。友人の娘さんがここでの生活を離れてイギリスへ帰ることになり、その見送りのためにジブラルタルへ行ったことがありました。
この村からジブラルタルへ行くには、山を越え、カサレスの近くを通り、高速道路に乗るルートがあります。その高速へ入る手前のラウンドアバウトに差しかかったとき、警察が何台も停まっていて、車を止められました。
どこへ行くのかと聞かれ、「ジブラルタルへ」と答えると、「それなら通っていい」と言われました。おそらく、反対方向へ行く車は止めていたのでしょう。
そのまま高速道路に入ると、不思議な光景が広がっていました。
車が一台も走っていないのです。前にも後ろにも、対向車線にも、まったく車がいません。
30分ほど走ったでしょうか。
まるで映画のワンシーンのようでした。ウィル・スミスが主演していた、街から人が消えてしまった映画を思い出したほどです。世界に自分ひとりだけが取り残されたような、不気味な感覚でした。
今朝の静かな道を歩きながら、ふとその時のことが蘇りました。今日は本当に人の気配がありません。さっき遠くで車が一台通ったくらいで、ほとんど誰もいないのです。
とはいえ、こういう静かな時間の散歩も、曜日によっては少し注意が必要です。
昔、犬を飼っていたころの話です。
週末の朝、犬を連れて散歩していると、車が止まり、中から酔った若者たちが話しかけてきたことがありました。
そのとき一緒にいたのは、ボクサー犬の愛犬で、体重は35キロほど。筋肉質でとても引き締まった犬でした。相手もそれを見て、からかうような雰囲気ではなく、軽く話しかけてそのまま去っていきましたが、それ以来、週末の早朝に一人で歩くのはあまりしないようにしています。
平日なら、仕事に向かう人や車の行き来があるので安心なのですが、土日は人通りが極端に減るのです。
スペインも、昔は今よりずっと荒っぽい時代があったと聞きます。友人は子どものころ、「大きなバンが通ったら気をつけなさい」と親から言われていたそうです。
実際、私が若いころヨーロッパを一人で旅していたときも、「スペインは危ないから行かないほうがいい」と言われたことがありました。
当時は夜行列車がありましたが、貴重品バッグを体にチェーンで固定した方が良いと聞きました。それでもそのカバンを引っ張られたと言われていた時代です。私は結局スペインには入らず、南フランスから北へ向かいました。
友人の一人は、そのころスペインの島へ旅行に行ったそうです。日本人の若い女性二人で歩いていたところ、島の男性たちがぞろぞろ後ろについてきて、とても怖い思いをしたと言っていました。結局その日の夕方のフェリーで、急いで島を離れたそうです。
今では考えにくい話ですが、時代が違えば雰囲気もずいぶん違うものです。
そして夜。
午後から気温はさらに下がり、夕方にはみぞれのような冷たい雨が降りました。
天気予報の通り、今日はかなり冷え込みました。
春が近づいているとはいえ、まだ冬は完全には去っていないようです。
外の空気は冷たく、夜になっても寒さが残っています。
暖かい日が戻ってくるまで、もう少し時間がかかりそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。





