4月に入ったとはいえ、ここアンダルシアの春はまだ不安定です。
この日は朝から強い風が吹きつけ、太陽は出ているのに、体感はどこか冬の名残を引きずっているような寒さでした。家の中にいると余計に冷えを感じ、外の明るさとのギャップに少し戸惑います。
今週は聖週間、いわゆるセマナ・サンタです。スペイン各地で宗教行列が行われていますが、この村では夜に行列が予定されていました。
それに間に合うように仕事を終え、買い物も済ませておこうと、朝から段取りを考えます。明日は祝日で店も閉まるため、食料の補充も欠かせません。
日中はいつも通り仕事をこなし、夕方になると、自然と足はいつものバルへ向かいました。村の闘牛場の横にある、顔なじみが集まる場所です。
軽く一杯のつもりが、気づけばグラスを重ね、そこに居合わせた人たちと合流する流れになります。
スペインの田舎の白い村では、こうした時間の過ごし方は実に自然です。誰かが来て、誰かが去り、また別の人が加わる。その流れの中で、気がつけば一緒に行動しているのです。
この日も「一緒に行こう」という一言で、皆で宗教行列を見に行くことになりました。
夜10時過ぎ、教会から神輿が、管楽器のブラスバンドの音楽とともに4基出てきます。夜の行列は、ろうそくの灯りに照らされ、とても幻想的です。
神輿は村の中をゆっくりと練り歩き、深夜、12時前に村役場前の広場へと到着します。
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| 夜10時みな教会に集まっている時間です。 |
広場にはすでに多くの村人が集まっており、そこへ、ろうそくの灯りに包まれた行列が静かに姿を現しました。昼間とはまったく違う、厳かで張りつめた空気が漂います。
スペインの宗教行列の見どころのひとつが、「パソ」と呼ばれる神輿です。セビリアやマラガなどの大きな都市では、100人以上で担ぎ、音楽隊や伝統衣装をまとった人々が長い列をなし、全体で1,000人を超える規模になることもあります。
それに比べると、この村の行列はずっと小規模で、一基あたり20人から25人ほどで担がれます。行列全体でも100人ほどでしょうか。
ただ今夜は神輿が4基出たため、全体では180人ほどの行列になっていたと思います。
そして印象的だったのは、女性たちのグループです。ここ数年で始まったもので、小さめの神輿を女性だけで担ぐ姿が見られました。
とはいえ、そのすぐそばには屈強な男性たちが控えており、いざという時にはすぐ支えられる体制が整っています。その様子には、この土地に息づく伝統と、少しずつ進む変化の両方が感じられました。
これまで私は、少し離れた場所から行列を眺めることが多かったのですが、この日は友人に背中を押され、関係者が集まるような場所で間近に見ることができました。
その瞬間、ふと「自分はずいぶん恵まれているな」と感じました。
こうして異国の地で、ここまで深く文化の中に入り込める機会を持てていること。それは決して当たり前ではありません。
海外に出ると、「いつか日本に帰りたい」と思う瞬間は誰にでもあると思います。けれど同時に、「帰る場所があるのか」という現実にも向き合うことになります。
私自身、いわゆる『実家』として帰る場所はもうありません。もちろん、友人と将来一緒に暮らそうという話はありますが、それはまた別の形です。
だからこそ思うのです。
海外で暮らすなら、その土地に根を下ろす覚悟が必要だと。そして、その場所でどれだけ関わり、どれだけ何かを返していけるかが大切なのではないかと。
そんなことをぼんやり考えながら、再びバルへ戻り、もう一杯だけ飲みました。気づけばすっかり酔いも回り、賑やかな夜の余韻を残したまま家路につきます。
昼間の冷たい風とは対照的に、夜の空気はどこかやわらかく、心地よく感じられました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







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