朝は夏とは思えないほど涼しく、仕事のアプリを開いてみると、珍しく何も入っていませんでした。
午前中には、友人でもある生徒さんとの英会話レッスンが予定されていたため、その準備をしていました。すると、日本にいる彼から、住んでいる地域で雷を伴う激しい雨が降り、停電しているという連絡が入りました。
しばらくして電気は復旧したものの、雨と雷は収まらず、いつまた停電するか分からないとのことでした。そのため、この日のレッスンは中止にすることになりました。
ちょうどその頃、修理工場から、注文していたタイヤが届いたという連絡がありました。先日の車検では、タイヤの交換と、曇ったヘッドライトの修理が必要だと言われ、不合格になっています。そのため、前もって新しいタイヤを注文してもらっていたのです。
午前11時頃に車を持ってきてほしいと言われ、村の外れにある修理工場へ向かいました。
作業が終わるまで工場で待つこともできましたが、ほかにも用事があったため、歩いて家へ戻ることにしました。修理工場から村までは上り坂です。朝は涼しかったものの、11時を過ぎると日差しが強くなり、できるだけ日陰を選びながら歩きました。
村の中心部に入ると、メインストリートの上に日除けを取り付ける作業が進んでいました。夏祭りは8月の第3週ですが、それまでにも週末ごとにさまざまな催しがあります。暑い季節に備えて、通りを覆う日除けの準備が早くも始まっていたのです。
銀行の用事を済ませて家に戻り、午後の外出の準備をしながら、細かな作業を片付けました。もし仕事が入っていたら、かなり慌ただしい一日になっていたでしょう。何も入っていなかったのは、むしろ幸運でした。
そうしているうちに、修理工場からタイヤ交換が終わったという連絡が入りました。翌日に取りに行くことも考えましたが、やはりその日のうちに受け取ることにしました。
今度は坂を下り、再び修理工場へ向かいます。かなり暑くなっていましたが、下り坂だったので、行きよりは楽でした。代金を支払い、車を受け取って家へ戻りました。
タイヤ交換が終わると、次に気になったのは車検の再検査です。木曜日には村の外へ出かける予定があります。近場とはいえ、不合格のまま走るのは落ち着きません。万が一、警察に止められれば、罰金を科される可能性もあります。
車検の結果を記した書類にはQRコードが付いていました。読み取ると自分の車の情報が表示され、修理を行った工場の名前と事業者番号を登録できるようになっています。
手続きを進めると、翌日の夜8時前に空きがあったため、急遽予約を入れました。これで一つ、気がかりが減りました。
午後2時半には、マリが迎えに来てくれました。知人が海側の町に所有している家があり、普段は定期的に異常がないか確認しています。その持ち主が御家族とともに滞在しているというので、会いに行くことになったのです。
目的地までは、車でおよそ2時間かかりました。以前はもう少し早く着いたのですが、途中の道路に速度監視カメラが設置され、制限速度が時速60キロになった区間があります。かつては車がかなり速く走っていた場所ですが、今ではゆっくり進まなければなりません。
そこを抜けて高速道路に入り、二つほど先の出口で降りて、ゴルフ場の多い地域へ向かいました。
電話では何度も話していましたが、直接会うのは初めてです。家には御本人と息子さん、お孫さんがいらっしゃいました。よく知っている間柄ではないうえ、「来ていただけますか」と頼まれて訪ねたものの、何を目的に呼ばれたのかが、私にはよく分かっていませんでした。
楽しく話をしながらも、何を求められているのか、私がどこまで手を出してよいのかを考えていました。
海外に長く住んでいると、希望や必要なことをはっきり言葉にする習慣が身に付きます。相手の気持ちを察することが重んじられる日本とは、少し違います。
私も香港に住んでいた頃、日本へ帰ると「言い方がきつい」と言われることがよくありました。はっきり伝えなければ物事が進まない環境に慣れていたからでしょう。
今回も、ゴルフクラブの会員資格がどうなっているのか調べてほしい、というような話が出ました。ただ、書類も連絡先も手元になく、本人でなければ確認できない内容もあります。電話で問い合わせても、私に個人情報を教えてくれるとは思えません。
そこで、話を続けるよりも直接行った方が早いと思い、皆で近くのゴルフクラブへ向かいました。私も初めて訪れた場所です。建物の中にはゴルフ用品の売り場と受付があり、その前にはすてきなレストランもありました。
受付で事情を尋ねてみましたが、会員に関する手続きはそこではできず、平日の午前8時から午後2時まで開いている事務所へ行かなければならないとのことでした。その時間はすでに閉まっていたため、この日は確認できませんでした。
銀行の手続きもうまくいっていないという話が出たので、必要であれば翌日一緒に行けると伝えました。ただ、そこまでの手助けを望んでいるのか、御家族で対応するつもりなのかは、その時はよく分かりませんでした。
海側の町では英語が通じる場所も多いため、私でも英語なら交渉できます。しかし、息子さんからは、自分たちで何とかしてみるという返事がありました。こちらからあまり前に出るのも違うように思え、そのままにしました。
そもそも、初めてスペインを訪れた方ではありません。海側の町に家を持ち、長年この地域で過ごしてきた方です。土地のことを何も知らないわけではないため、私があれこれ提案しすぎるのも失礼になるかもしれません。
ただ、息子さんや、特にお孫さんには、せっかくのスペイン滞在を楽しんでもらいたいと思っています。私の住む村まで来ていただけるなら、まずはバルで何かを食べ、その後、コルク樫の森を案内できればと思います。
日本では、コルク樫を実際に見る機会はほとんどありません。樹皮を剝がした木を見て、幹に触れてもらえば、この地域らしい体験になるはずです。観光地を巡るだけでは分からない、アンダルシアの自然に触れてもらえるのではないでしょうか。
帰り際には、日本から持ってきてくださったお土産をたくさんいただきました。小袋に分かれたお煎餅、ずっしりと重い羊羹、そして何種類もの即席味噌汁です。これだけの物を運んでくるのは大変だっただろうと思います。
羊羹を食べるのは久しぶりです。日本茶が少し冷凍庫に残っていたはずなので、一緒にいただくのを楽しみにしています。
帰り道では、ガウシン村のバルに立ち寄りました。お腹が空いていましたが、厨房が休憩に入っている時間帯で、温かい料理はありませんでした。そこで、エンサラディージャ・ルサというスペイン風のポテトサラダを食べることにしました。私はビールを、マリはコーラを注文しました。
いただいたお煎餅を一袋マリにも勧めると、「おいしい」と喜んで食べていました。日本のお煎餅は、こちらの友人たちにも意外なほど好評です。
村へ戻ると、ガソリンスタンドの隣にあるバルで、友人のトムを見かけました。少し一緒に飲みながら話をしていると、山の上から黄金色の月が昇ってきました。丸い光がゆっくりと姿を現す様子は、線香花火の火の玉を逆さにしたようで、とてもきれいでした。
トムは歯の調子が悪く、硬いお煎餅は遠慮していました。その代わり、即席味噌汁を一つ渡しました。英国人の彼は味噌スープをよく知っているので、喜んでいました。
その後、もう一杯飲もうということになり、プールのバルへ向かいました。途中でホアニートとビクトリアに会い、一緒に飲むことになりました。二人にもお煎餅と味噌汁を分けると、特に味噌汁を楽しみにしている様子でした。スペイン人の二人は、おそらくまだ飲んだことがないのでしょう。
この辺りでは、日本の食品は簡単には手に入りません。日本から何か送ってもらったり、お土産をいただいたりしたとき、分けられる物があれば、私は少しずつ友人たちに渡すようにしています。日本にはこんな食べ物があるのだと、知ってもらえたらうれしいからです。
結局、予定していたよりも何杯か多く飲んでしまいました。少しふらつきながら、重い羊羹の入った袋を大事に抱えて家まで歩きました。
車の修理に始まり、長いドライブと初対面の方との会話、そして夜のバルまで、盛りだくさんの一日でした。家に着いた頃には、体も気持ちもすっかり疲れていました。














