この日は、セビリアを出て村に戻る日です。とはいえ、その前にもう少しだけトリアナで過ごすことにしました。
朝、宿泊先を出てタクシーに乗り、まずはローラの家へ向かいます。大きな荷物を持ったまま町を歩くのは大変なので、先に荷物を置かせてもらうことにしました。こういう時、現地に友人がいるのは本当にありがたいです。
荷物を置いたあと、トリアナのショッピング通りへ出ました。歩行者天国のようになっている通りで、店が並び、地元の人たちが買い物をしたり、朝の時間を過ごしたりしています。セビリア中心部とはまた違う、生活感のあるにぎわいがあります。
ただ、車は通らないものの、自転車専用レーンがあるので注意が必要です。気を抜いて歩いていると、意外と危ないと感じました。
まずは朝食です。入った店で、丸い全粒粉のパンを半分に切ってトーストしたものを注文しました。バターとジャムをつけ、コーヒーと一緒にいただきます。特別な朝食ではありませんが、香ばしいパンと温かいコーヒーがあるだけで、ゆっくり一日が始まる気がします。
その後は川のほうへ歩きました。トリアナは、やはり川と一緒にある町です。川沿いには橋の下を歩ける場所があり、そこを少し散歩しました。向こう岸にはセビリアの中心方面が見えます。ほんの少し離れただけなのに、こちら側から眺めると、町の表情が少し違って見えました。
そのあと市場にも立ち寄りました。市場の中を歩くと、その土地の生活が見えてくるようで楽しいものです。魚介類、野菜、肉、そして生ハムの原木が並んでいます。
中でも目に留まったのは、ハブーゴ産の5つ星生ハムです。どんぐりを食べて育ったイベリコ豚のベジョータで、見るからに立派なものでした。
しばらくして、ローラと合流しました。
そこから向かったのは、ローラの友人がいるバルです。「ゴロンドリーナス(つばめ)」という名前のお店です。
ローラの友人は生ハムを切るのがとても上手で、そこで切ってもらったハムをいただきました。
薄く切られた生ハムをビールと一緒に食べると、やはりスペインにいるのだなと思います。
その後、いったん荷物を取りに戻り、次のバルへ向かいました。ここは去年も来たことがある店で、魚介類やタパスがおいしいところです。エビを食べながらビールを飲みました。
ただ、このあと長距離バスに乗る予定があったので、ビールは控えめです。トイレに行きたくなったら困るという話をすると、同じ年代の人たちはみな同じような悩みを抱えているようでした。中には手術をしたという人もいました。
そこで少し驚く話を聞きました。ある人はボトックス注射を受けたそうです。そのおかげで、セビリアの春祭りで外に長く出ていても、トイレに行ったのは一度だけだったと言っていました。本人はとてもよかったと話していました。
ボトックスは顔にするものと思っていたので衝撃でした。
それは私立病院(100%自己負担)なのかと聞くと、公共病院(自己負担なし)で受けられるとのことです。私は初めて聞いたので驚きました。一緒に旅していた友人も同じように驚いていました。いつか自分も本当に困るようになったら、そういう方法もあるのかもしれないと思いました。
こうして地元の人たちとバルで過ごしていると、旅行でありながら、ただの観光とは少し違う時間になります。名所を見て回るのも楽しいですが、誰かのいつもの店に連れて行ってもらい、友人たちと話しながら食べたり飲んだりする時間には、また別のよさがあります。
今回の旅で強く感じたのは、日本人旅行者をほとんど見かけなかったことです。季節的なこともあるのかもしれませんが、それにしても少ないと感じました。
昔なら、スペインの観光地には日本人の団体旅行客や個人旅行者がたくさんいました。けれども今回は、個人旅行らしい人を一人、二人見かけたかどうかという程度です。やはり円安が大きく影響しているのでしょうか。
一方で、韓国や台湾から来ている人たちは見かけました。ただ、ツアーというより個人旅行の人が多い印象です。以前は中国本土からの団体旅行者であふれているように感じる時期もありましたが、今回はまったくと言っていいほど見かけませんでした。
旅先で聞こえてくる言葉や、歩いている人たちの雰囲気からも、観光客の流れが変わってきているのを感じます。
バルでの時間を終えたあとは、バスでプラサ・デ・アルマスのバスターミナルへ向かいました。そこからロンダまで、さらにバスで約2時間の移動です。
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| ここはかつて鉄道駅でした。 |
バスステーションでは、台湾から来た4人組の方と少し話しました。日本語がとても上手で、私も香港に住んでいた時に、広東語や北京語をもっと勉強しておけばよかったと思いました。
円が安くなり、ヨーロッパの物価も上がっています。日本から旅行に来るには、以前よりかなり負担が大きくなっているのだと思います。
ふと、昔イギリスに住んでいた時のことを思い出しました。38年も前のことですが、そのころもポンドは決して安くありませんでした。1ポンド240円台だったと記憶しています。日本と比べて、イギリスの物価もそこそこ高かったと思います。
それでも当時は、日本人の学生や旅行者がたくさんいました。今思うと、あのころはどうしてあれほど多くの人が海外に出ていたのだろうと不思議になります。
ロンダまでのバス移動は直行で、快適でした。到着すると、イギリス人の友人が迎えに来てくれていました。待ち合わせはスーパーだったので、そこまで歩いて向かいます。一緒に旅していた友人も彼とは面識があり、25年ぶりの再会になりました。
途中で、「クエバ・デル・ガト」と呼ばれる洞窟から水が出ている場所に立ち寄りました。以前から知っている場所ですが、久しぶりに見ると少し様子が変わっています。
橋はまだ残っていましたが、その先の歩く場所は一部崩れていました。それでも、なんとか近くまで行くことはできます。おそらく岩が崩れたのでしょう。周囲の形が少し変わっていて、以前とは違う雰囲気になっていました。
出ている水はとても冷たく、真冬のようにひやっとします。季節は5月ですが、山の水にはまだ冬の気配が残っているようでした。
その場所を少し見学してから、村へ戻りました。帰ってからは、バルで3人でビールを飲みます。その後、私たちはスーパーへ行き、そこでまた知り合いに会って、少しだけ飲むことになりました。
村では、こういう偶然がよくあります。買い物に行っただけのつもりが、誰かに会い、少し話し、少し飲む。予定していなくても、自然に時間がつながっていきます。
家に戻ってからは、残っていたワインを二人で少し、いや、一本飲みました。それで、この日の一日は終わりです。
朝はトリアナでパンとコーヒーを楽しみ、川沿いや市場を歩き、友人たちとバルで過ごしました。午後にはバスでロンダへ戻り、山の水に触れてから、いつもの村の時間へ。セビリアのにぎわいから村の静けさへ戻っていく、移動しながらも人との時間に恵まれた一日でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。












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