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2026/06/30

6月23日(火) 家族の手紙を読み解く一日

この日は、友人のカルメンの家へ行きました。彼女の祖父母が交わした古い手紙を文字に起こす作業を手伝うためです。今回で二度目になります。

手紙が書かれたのは、スペイン内戦によって家族が離れ離れになっていた時代です。遠く離れた家族が互いの無事を気遣い、再会を願いながら書いた言葉が残されています。それらを読み取れる形にして、記録として残すのが、カルメンの進めているプロジェクトです。

今回も、作業には5時間ほどかかりました。

手紙の画像をAIに読み込ませれば、ある程度までは文字にしてくれます。しかし、昔の手書き文字をすべて正確に読み取れるわけではありません。結局は原本と文字起こしを一つひとつ見比べ、綴りや読み間違いがないかを確認しなければなりません。

中にはタイプライターで打たれた手紙もあります。活字であれば私にも比較的確認しやすいのですが、手書きのものになると、カルメンが根気よく読み解く必要があります。

原文の文字起こしが終わると、次は当時の表現や古い綴りを、現在のスペイン語で読みやすい形に整えます。その後、英語へ翻訳します。

私は英語は読むことはできますが、AIが翻訳した英語の表現や文法が正しいのかは、判断はできません。あるいは、文法が正しくても、こういう表現はしない、とか、古い言葉だとか、こればかりはネイティブにしか判断できないことです。

そのため、大変でしょうが、カルメンが確認しないといけないのです。私は主に原文と文字起こしを見比べる役目をしています。

カルメンの母親はスペイン人で、父親はイギリス人です。彼女自身はイギリスで育ったため、第一言語は英語です。スペイン語は子供の頃からスペインへ遊びに来て、親戚や周囲の人たちと話す中で身につけました。

本人は自分のスペイン語を冗談交じりに「ストリート・スパニッシュ」と呼んでいます。学校で文法を一から習ったわけではなく、日常の会話を通して覚えたスペイン語だからです。

それでも、今回の文字起こしを始めてから、スペイン語の力がかなり上がったと話していました。何十年も前に書かれた文章を読み、綴りや文法を確認し、現代の言葉に置き換える作業を続けているのですから、自然に理解が深まっていくのでしょう。

スペイン語は、動詞の活用をはじめ、文法上の決まりが多い言語です。文章を読むと、書いた人がどのような教育を受けていたのかが、言葉遣いや綴りから伝わってくることもあります。

日本語にも、文章の巧拙や語彙の違いはあります。ただ、スペイン語ほど文法の形がはっきり表に現れないように感じます。英語の場合は、文章だけでなく、話し方や発音によって、その人が育った地域や環境が見えてくることがあります。

言葉によって、書き手や話し手の背景が表れる場所が違うのかもしれません。古い手紙を読みながら、そんなことも考えました。

私は文字や綴りに間違いがないかを中心に見ているため、作業中はどうしても文字そのものに意識が向きます。一方、カルメンは、そこに書かれた内容を理解しながら読んでいます。

そのため、ときどき目に涙を浮かべたり、「ああ、良かった」とほっとした表情を見せたりします。手紙を書いたのは、自分の祖父母です。そこに記されている不安や喜びは、彼女にとって遠い時代の出来事ではありません。

家族が離れ離れになり、いつ届くかも分からない手紙に思いを託していた時代。その言葉を孫であるカルメンが読み、今の言葉によみがえらせています。

私はその横で文字を確かめているだけですが、このプロジェクトに加われたことをうれしく思います。

長い作業を終えたあとは、ガソリンスタンドの隣にあるバルへ寄りました。少し前から、薄手のセーターが見当たらず、家の中を何度探しても出てこなかったのです。

ふと、あのバルに置き忘れたのではないかと思い、尋ねてみると、やはり保管してくれていました。捨てずに取っておいてくれたことにほっとしました。

せっかくなので少し飲んでいると、友人たちもやって来ました。しばらく話をしてから家へ戻りました。

夜10時ちょっと前の景色

帰宅した頃には、もう遅い時間でした。それなのに、家にあった最後の袋麺を食べてしまいました。日本の日清ではなく、香港の日清が作っている出前一丁です。

食べている時は満足しているのですが、翌朝、台所に残った袋や器を見るとがっかりします。

「ああ、またやってしまった」

古い手紙を前に、家族の歴史や言葉について真面目に考えていた一日の終わりが、夜中の袋麺でした。そんな締めくくりも、普段の暮らしらしい気がします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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