前日の夜、一緒に飲んでいた友人たちと「明日の朝はチュロスを食べに行こう」と約束していました。時間は10時半頃だったはずです。
朝起きてシャワーを浴びていると、友人のマリカルメンから電話がかかってきました。出られずにいると、また電話です。
ようやく話すと、「いつ来られるの?」と、もう今すぐ出かけるような勢いです。
「今シャワーを浴びたばかりだから、先に行っていて。準備してから行くから」
そう伝えました。間に合わなければ、一人でチュロスを食べてるだけの話です。
ところが、行ってみると肝心のチュロス屋が閉まっていました。
この辺りでは、夏の観光シーズンが終わった9月頃に休暇を取る店が少なくありません。7月、8月は夏休みの客で忙しいため、その時期を避けて店を閉め、ようやく自分たちの休暇に出かけるのです。
仕方がないので、近くのカフェテリアへ行きました。
すると、前日の夜に一緒にいた、カディスから来ている友人がすでに座っています。
「マリカルメンは?」
と聞くと、
「まだ来ていないよ」
とのこと。
あれほど「今すぐ行く」という勢いだったのに、まだ来ていません。
そういえば、マリカルメンはいつも時間にかなりおおらかな人でした。「ああ、またか」と思い出し、カディスから来た友人と話しながら待つことにしました。
しばらくすると、ようやく本人が現れ、三人で朝食を取りました。
その後、村から少し外れた田舎にある家を見に行くというので、一緒について行きました。見学を終えて村へ戻り、私はスーパーへ寄ろうかと思ったものの、土曜日で混んでいたのでやめました。
家の掃除もしたかったので、いったん帰宅です。
夜には、隣村のヒメラ・デ・リバルでライブが予定されていました。
地元のロックバンド「The Equis」が演奏するというので、これは行こうと楽しみにしていました。
ライブはヒメラの村の中心部ではなく、駅のある地区のバルで行われます。夕方7時半頃に出て、先に村で少し飲んだり何か食べたりしてから会場へ向かおう、という話になっていました。
前日からセビリアの友人ローラも村に来ていました。本来はこのライブを見に来たようなものだったのですが、頭が痛いらしく、昼間もほとんど外へ出ていません。
一応連絡してみると、やはり「今日は行かない」とのことでした。
ではマリカルメンと7時半に待ち合わせだと思い、
「7時半でいい?」
とメッセージを送ると、
「7時半なんて早い、早い」
という返事です。
どうやら今は親戚の人と一緒に過ごしているらしく、すぐには出られない様子でした。
朝はあれほど急いでいたのに、夜になると今度は7時半が早すぎると言います。
もういいや、と思いました。
「では私は一人で行くわ」
そう返して、一人で車を走らせました。
村を出るところには、Institutoと呼ばれる中学校と高校が一緒になった学校があります。その近くを通ったところで警察がいて、久しぶりに車を止められました。
「免許証を見せてください」
と言われ、免許証を渡しただけで終わりました。
この時期、カディス方面の隣町のウブリケでは祭りが開かれていて、月曜日の朝まで続く予定です。その関係で警察が出ていたのかもしれません。祭りの時期になると、飲酒運転や薬物関係の検問が行われることがあります。
無事にヒメラへ着くと、バルには英語圏の顔見知りが何人かいました。一人で来ても誰かしら知っている人がいるのが、こういう小さな地域の良いところです。
その人たちと一緒にいると、朝にも会ったカディスからの友人もやって来ました。
ところが、肝心のライブは私が期待していたものとは少し違いました。
The Equisは、マルコスがボーカルを務める三人組のバンドです。私はいつもの三人の演奏を期待して来たのですが、この日は女性ボーカルとキーボードが加わっていました。
もちろん好みの問題ですが、私には少し物足りなく感じられました。
「今回はちょっと外したかな」
と思いながら聴いていると、遅れてマリカルメンもやって来ました。
彼女とカディスから来た友人は、バルの中へ入って何か食べています。私は食べるつもりがなかったので、そのまま外で音楽を聴いていました。
The Equisで私が特に好きなのはドラムです。
以前聴いた時は、とても力強くて素晴らしい演奏でした。
ところがこの日は、どうしたのだろうと思うほど精彩がありません。
急に歳を取ってしまったようにも見えて、少し驚きました。
そんなことを思いながら、周りに合わせて私も音楽に乗って踊っていたのですが、今度は自分の足まで少しもつれます。
「あれ?」
人のことを言っている場合ではありません。
私も歳を取っている。
当たり前のことなのですが、その夜は妙にそれを実感しました。
昔から知っている人たちが少しずつ歳を重ね、演奏も変わる。そして自分自身の体も、以前と全く同じというわけではありません。
皆、一緒に歳を取っているのだな、と少し考えさせられる夜になりました。
しばらくして、私はもう帰ろうと思い、一人でさっさと車に乗りました。
こういう時、自分の車で来ているのは本当に楽です。
もちろん運転するのでお酒は飲めません。それでも、「もう帰りたい」と思った瞬間に帰れるのは大きな利点です。
誰かの車に乗せてもらっていると、その人が帰るまで待たなければなりません。しかもスペインでは、時間の感覚が私とは少し違う人も多く、「もう帰ろう」と思ってからが長いこともあります。
その点、一人で車で来れば自由です。
帰りは夜12時頃でしたが、行きにいた警察はもういませんでした。
村へ戻ってから、どこかのバルに寄ろうかとも思いました。外からちらりと見て、顔見知りでもいれば一緒に一杯飲もうかと思ったのですが、特に知っている人は見当たりません。
それなら家でいいか、とそのまま帰りました。
家にはワインがあります。
一杯飲みながら、「今日はなんだか疲れたなあ」と思い、ようやく静かな時間です。
朝から友人の時間に振り回され、夜はライブへ出かけ、最後には自分まで歳を取ったことを実感する。
少し予定の狂った一日でしたが、一日の終わりに自分の家でワインを飲んでいると、やはりここが一番落ち着きました。





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