朝からしとしとと雨が降っています。
昼間は静かな雨だったのに、夜になると少し激しくなってきました。
ウェルバに住む友人にメッセージを送ったら、「こっちは嵐のようだよ」と返事がありました。同じアンダルシアでも、場所によってずいぶん違うものですね。ニュースを見なくても、「ああ、このあたり一帯に大きな雨雲がかかっているんだろうな」と想像がつきます。
ウェルバの友人と、お父さんのこと
その友人とは、日本語のレッスンをときどきオンラインでしたりしています。しばらくお休みしていたのですが、「また始めよう」と約束していた日でした。
ところが、そのレッスンをキャンセルしたいというメッセージが届きました。
理由を聞くと、お父さんが転んでしまい、今病院にいるのだそうです。
さっきまた様子を聞いたら、「病院はお年寄りでいっぱい。しかも外は嵐みたい」とのこと。想像しただけで、ぐったりするような光景です。
午後2時からずっと病院にいるらしく、連絡を取り合ったのは夜10時ごろ。泊まり込みにはならないようですが、翌日は学校で授業がある彼女のことを思うと、寝不足のまま教室に立つのは本当に大変だろうなと思います。
お父さんが早くよくなって、無事に家に帰れますように、と願わずにはいられません。
アンダルシアの「無料だけれど、すぐには診てもらえない」医療
こちらには、公立の病院と私立の病院があります。
公立病院はソーシャルセキュリティのシステムに入っている人なら基本的に無料で診てもらえます。「お金がかからないなんていいわね」と思われるかもしれません。
でも、「無料」ということは、「本当に命に関わる状態でないと、なかなか診てもらえない」という現実もあります。
いざとなればヘリコプターも飛んできますし、救急となれば対応はとても素早いのですが、それ以外の「じわじわ困っている」類いの不調には、とにかく時間がかかります。たとえば白内障の手術ひとつ取っても、ウェイティングリストに載ってから2年待ち、なんて話も聞きます。
お医者さんたちの勤務時間も、日本のように長時間労働ではないようです。夏には1か月きちんと休みを取ることも多く、その期間はさらに予約が取りにくくなります。
「具合が悪いから、とりあえず行ってみる」という感じではなく、「必ず事前に予約を取ってから」でないと診てもらえません。
顎の不調と、長い長い「順番待ち」
今でも顎の調子が良くないのですが、以前、公立の病院にお世話になったことがありました。
まずは村の診療所へ行き、事情を説明して予約を取ります。そこから実際にロンダの診療所(病院と診療所の中間のような施設)に行けたのは、たしか3週間後くらいだったでしょうか。
やっと順番が回ってきて診察室に入ると、まず話を聞いてくれて、それから「レントゲンを撮ってきてね」と言われます。レントゲンを撮ったらその日は終わり。「次はいついつにもう一度」と、また別の日に予約を取ってという流れです。
一応診てもらった結果としては、どうやら寝ているときに歯を強く食いしばってしまっているようで、それが顎の不調につながっているのだろう、とのことでした。
「マッサージなどに通ってくださいね」と言われたものの、そのマッサージも結局はすべて私立扱い。自分で探して、自分で全額負担です。
歯医者さんは「ほぼ自費」の世界
こちらの歯医者さんは、また少し事情が違います。
公立のシステムでカバーされるのは、基本的には「歯を抜く」ことくらい。レントゲンを撮ってもらったり、歯を抜いてもらうのは無料ですが、詰め物をしたり、治療したりという部分は一切含まれません。
つまり、それ以上のことをしたければ、すべて私立の歯医者さんに行くしかないのです。治療費はもちろん100%自費。日本のように「どこへ行ってもとりあえず3割負担」という感覚とはかなり違います。
だからこそ、こちらで暮らす人たちは、私立病院用の医療保険に入ることが多いです。月々いくら、という保険料を払っておくと、受診のたびに少しだけ払えばいいプランもあれば、ほとんど追加料金がかからないプランもあります。
ただ、私の場合は、病院のある町まで行くのに距離があることもあり、一度保険に入ったものの、結局やめてしまいました。
今は公立の「無料」の方にしか行かないので、そもそも病院自体、ほとんど利用しません。
海外の、しかもこんな田舎に住んでいると、「健康でいること」そのものが、一番の保険なんだなとつくづく感じます。
ニューカレドニアから戻ってきた友人
そんな医療のことを考えつつも、昨晩は久しぶりにエミリオのバルへ出かけました。仕事を終えて、まだ外が明るいうちに家を出ます。
半年はこちらの村で、もう半年はニューカレドニアで暮らす、という生活をしている友人がいるのですが、その彼女が久しぶりに戻ってきたのです。
「じゃあ、ウェルカムドリンクね」ということで、バルで集まることになりました。他にも何人かがやってきて、気がつけばすっかり賑やかなテーブルに。といっても、夜10時ごろにはちゃんとお開きにして帰ってきました。
ニューカレドニアまでは、昔はパリ経由で日本からも直行便があったそうです。彼女はそのルートを長年使っていたとか。でもコロナ以降、その路線がなくなってしまい、今は南経由です。
今回はこちらに戻ってくるとき、ニューカレドニアからシンガポール、パリを経由して、マラガまで戻って来たそうです。
彼女いわく、所要時間は30時間以上。聞いただけで、腰と首が痛くなりそうです。
30時間越えのフライトと、年齢のこと
実は私も、一度だけ空港から空港まで30時間以上の旅をしたことがあります。
香港からサンフランシスコ、マイアミ、そしてブエノスアイレスへと飛んだときです。途中で日付の感覚がよく分からなくなり、「今いったい、何曜日の何時なんだろう」とぼんやりしていました。
今、日本へ帰るときも、ドアからドアまでだいたい24〜26時間。
ロシア上空を飛べなくなってから、ヨーロッパと日本を結ぶフライト時間は少し長くなりました。飛行機に乗っている時間は13〜14時間くらいでしょうか。それに、家から空港までの移動や、乗り継ぎの時間が加わると、丸一日がかりです。
それでも、彼女のように30数時間かけてこちらにやって来て、たった1週間ほど経ったら今度はバルセロナへ遊びに行く、なんて元気は、さすがにもう私にはありません。
息子さんが仕事でバルセロナに来るので、4日間ほど会いに行く予定だそうです。
彼女はスペイン人ですが、幼少期はパリで過ごし、高校卒業後はロンドンに移り住み、そのなかでフランス人のご主人と出会ったそうです。そして世界中を旅行して、最後は2歳の息子ちゃんを連れヨットで2年かけてニューカレドニアまで行き、そこに定住したそうです。
飛び回ってきた歴史をそのまま体現するような、パワフルな人です。
切符はネットではなく、駅の窓口で
そんな彼女は、「ネットでチケットを買うのは嫌い」と笑います。
今週中にロンダまで行き、鉄道駅の窓口でバルセロナ行きの切符を買うつもりなのだとか。ちょうどロンダに行く用事もあるから、そのついでに、というのが彼女らしいところ。
30時間かけてここへ戻ってきて、少し休んだと思ったら、またすぐ別の街へ出かける。そのエネルギーには、ただただ感心するばかりです。私より4〜5歳は年上のはずなのに。
縦並びの語学と、幼少期の「環境」のちから
彼女はスペイン語とフランス語がほぼどちらも母語のようなもので、英語も流暢です。まさに三か国語話者。
私も一応、日本語・英語・スペイン語、それから広東語も少し、という意味では複数の言語に触れてはいます。ただ、そのレベルは「横並び」ではなく、完全に「縦並び」です。
一番上に日本語、その下に英語、そのずっと下にスペイン語、一番底の方に広東語がちょこんといる感じ。やはり、幼少期から同じように使ってきた言葉とは、土台が違います。
YouTubeなどを見ていても、それはよく分かります。
小学校から中学校の時期を日本で過ごした韓国人のYouTuberさんや、アメリカ人でありながら日本の中学・高校時代を日本で過ごしたという方たちの日本語は、本当に「ほぼネイティブ」です。
一方で、デーブ・スペクターさんのように、とても上手でユーモアもあり、会話の中身もしっかりしているけれど、「あ、日本人ではない話し方だな」と感じる人もいます。どちらも素晴らしい語学力ですが、やっぱり「子どものころに、その国で生活したかどうか」で、発音やリズムはぐっと変わるのだなと感じます。
それでも、なんとかやっていける言葉たち
私が本格的に英語を学び始めたのは、24歳でイギリスに渡ったときです。
語学学校に通いながら、一日10〜12時間は勉強し、そして生活をする中で少しずつ身につけていったので、ネイティブのような流暢さには到底及びません。それでも、友人たちと楽しく会話できる英語です。
スペイン語は、アルゼンチンに行ったときが大きなきっかけでした。30数時間かけてたどり着いたブエノスアイレスで、当初わかるのは「グラシアス」「アグア・コン・ガス」「ポル・ファボール」くらい。そんな状態でよく行ったなあと、今になって思います。
でも、いま同じ場所に行ったとしたら、旅をするにはほとんど困らない程度には話せるようになっているはずです。流暢とは言えないけれど、少なくとも「旅のスペイン語」としては、自分なりに合格点をあげてもいいかな、と思っています。
引きこもり在宅ワーカーの、貴重なバル時間
ふだんは在宅で仕事をしているので、どうしても家にこもりがちです。
「今日はもう外に出たくないな」と思う日も多いのですが、昨日のようにバルで友人たちと会って、おしゃべりをしていると、「やっぱり出てきてよかった」と思います。
医療のこと、言葉のこと、長時間フライトのしんどさ、そして友人たちの底なしのエネルギー。
雨音を聞きながらそんなことを思い返していると、どこか遠くの国の出来事と、自分の小さな日常が、ゆるやかにつながっていくような気がします。
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| バルに売りにきました。5ユーロでゲット。 |
最後までお読みいただきありがとうございます。


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