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【村の行事】2025年
10月30日(金)〜11月2日(日) Dia de todos los Santos関連
12月6日(土)〜7日(日) Dia de la Constitucion関連

2025/12/06

12月6日(土) 青空と歌声、クリスマス前の村の一日

雨が続いたここ数日とは打って変わり、今朝はすばらしい青空が広がりました。

少し雲は残っていたものの、光が差し込むたびに空気まで澄んでいくようで、気持ちもゆっくりと明るくなります。こういう日は外に出かけたいところですが、今日は日本時間の日曜夕方までに翻訳の納品があり、午前中は家にこもって作業に専念していました。

家の中は相変わらず底冷えで、小さな電気ストーブの前に張りつくようにして仕事をしていました。

そんな寒さのなか、窓の外からは村じゅうに響きわたるクリスマスソング。どこかの家からではなく、役場が村に設置しているスピーカーからの放送です。音楽が流れるだけで、村全体が少しずつクリスマスの空気に包まれていくのを感じました。

仕事が終わったのは、こちら時間の1時半ごろ。ちょうどその頃、友人からランチのお誘いが届きました。友人と息子ちゃんの3人で、村のバルのテラスへ向かいます。太陽は雲に隠れたり顔を出したりでしたが、外の空気のほうが家の寒さよりずっとやわらかく、肩の力がふっと抜けるようでした。




友人の家族はフランスとスペインのミックスで、息子ちゃんはクリスマス休暇を利用して、はるばるお母さんに会いに来たのだそうです。このあとフランスでパートナーと合流し、さらにイギリスへ。その後、クリスマス前には再び村に戻り、お母さんと過ごす予定とのこと。全部で二か月もの休暇だと聞いて、思わず「どうしそんな生活ができるんだろう」と感心してしまいました。

食後は村をゆっくり散歩しました。広場やメイン通りには、ふわふわの大型遊具がいくつも並び、子どもたちの笑い声が冬の冷たい空気のなかを弾むように響いていました。




               

小さな屋台もいくつか出ていて、ちょっとだけ買い物を楽しんでから、さらに別のバルへ移動。

昼にビールを二本飲んだこともあり、これ以上のアルコールは寒さにひびきそうなので、マンサニージャ(カモミールティー)にアニス酒を少し垂らしたものを頼みました。湯気とともにふわっと甘い香りが立ちのぼり、飲むと体の芯がじんわり温まります。

そのあとスーパーに寄り、再び子どもたちの声が満ちる村を抜けて帰宅しました。

夕方の空は雲ひとつなく、昼間より深い青に染まり、とてもきれいでした。

天気予報によると、明日から月曜日にかけてさらに気温が上がるとのこと。家の中は冷えがこもっていて寒いのに、外に出ると太陽のあたたかさが意外なほど効いて、毎回その差に驚かされます。タイル張りの家は一度冷えるとなかなか温まらず、寒さだけが静かに残っていくのです。

それでも、青空が広がっているだけで気分が軽くなるから不思議です。

このあと、近所のオランダ人の友人の60歳の誕生日パーティーがあり、ワインを持って出かける予定です。

村の小さな冬の日常の中に、クリスマスに向けてちょっとした楽しみが続きます。

最後までお読みいただきありがとうございました。




12月5日(金) 🌈 アフリカ豚熱のニュースと、イノシシ料理・イベリコ豚のこと

今日は朝からずっと雨でした。

気温もぐっと下がり、家の中は冷え冷えとし、小さな電気ストーブでは凍えそう。

午後になっても雨は続いていたのですが、ふと外を見ると、雲の切れ間からわずかに光が差し込み、バルコニーの向こうにくっきりと虹が浮かんでいました。

雨に濡れた山肌の上にかかる虹は、いつ見ても特別なものです。

そんな静かな午後、ニュースを眺めていて、最近よく耳にするアフリカ豚熱(ASF)のことを、一度まとめておこうと思いました。

🦠 ASFは人には感染しないとされている

現在スペインで話題になっているASFは、バルセロナ近郊の野生イノシシから感染が確認されたもので、いまのところ アンダルシアでの感染報告はありません。

ASFは豚やイノシシに感染する病気で、人への感染はしないそうです。

また、ウイルスは熱に弱く、調理の過程で不活化されることも広く知られています。

そのため、一般的な料理を通じて健康に影響が出る可能性はないと考えられているようです。

🍽 レストランのイノシシ料理について

秋冬の南スペインでは、イノシシ料理がレストランで食べられます。

ジビエ肉は通常、専門の処理施設で検査を受けてから流通し、飲食店へ届けられる仕組みになっています。

さらに、煮込みやローストなど、しっかり加熱される料理が多いことも安心材料です。

現時点では、イノシシ料理を控えるような通知も出ていません。

🐖 放牧イベリコ豚のこと

秋から冬にかけて、dehesa(デエサ)の樫の林を自由に歩き回り、どんぐりを食べて育つ放牧のイベリコ豚。

このあたりでは山歩きの途中でその姿を見ることもあります。

ときには、野生のイノシシがイベリコ豚の群れに紛れ込んでいることもあり、農家や行政はこうした接触に特に注意を払っているようです。

一方で、出荷される豚は健康状態の確認が行われ、処理の段階でも検査を経て市場に出るため、アンダルシア産の豚肉が現時点で影響を受けているという話は耳にしていません。

🦌 鹿には感染しないとされる

ここの山でもよく見かける鹿にはASFは感染しないとされています。

感染するのは豚やイノシシといった“イノシシ科”の動物だけで、鹿や牛、人には広がらないと説明されています。

✅ いま注意すべきこと・日常でできること

ASFは今のところアンダルシアでは確認されていませんが、野生動物の動き次第でいつ状況が変わるか分からない面もあります。

とはいえ、私たちが日常生活の中でできることは、それほど複雑ではありません。

・ 近くでイノシシなどの野生動物を見かけても、むやみに近づかない・触らない

・ ゴミや食品の残りはしっかり密閉して捨て、野生動物を寄せつけないようにする

・ ペット(特に犬)と森や山へ入るときは、動物の死骸や残飯に近づけないように気をつける

特別な対策というよりも、日ごろの小さな心配りが野生動物や家畜を守ることにつながるという印象です。

不安なニュースが続くと気持ちも揺れますが、現段階では、私たちの日常の食卓に影響が出ているわけではなさそうです。

雨の中に浮かんだ虹を見ながら、そんなことを静かに整理した午後でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。


2025/12/05

12月4日(木) アンダルシアの小さな村で見える、働き方のいろいろ

今朝は、空一面を重たい雲が覆い、今にも雨が落ちてきそうな気配でした。予報では午後に少し降るとのこと。太陽が隠れている日は冷えるので、久しぶりに厚手のジャケットを着て散歩に出ました。

公園の中を歩いていると、前方から三人の男性がやって来ました。こんな静かな場所で一度に三人も現れると、思わず驚きます。みんな村の契約職員で、公園のベンチを見ながら「ここは良い」「ここは直した方がいい」などと相談していました。

蛍光イエローの反射ジャケットには “Cortes de la Frontera” の文字。スペインでは、車両が出入りする場所や交通に関わる作業では高視認ベストの着用が義務化されています。だから、あの反射色を見ると、すぐに「外の仕事だ」と分かる、そんな象徴のような存在感があります。

■ 子どもだった彼らが、家族をもつ年齢に

三人の中には、私がここへ来た頃はまだ子どもだった若者もいました。

当時は、村の道を走り回るような少年だったのに、今では父親に。村の子どもたちが大人になり、仕事をし、家族を持ち、村の一員として働いている姿を見ると、本当に時の流れの早さを感じます。

そんな彼もかつては評判のイケメンでしたが、今では髪も薄くなり、少しふっくらしてきて、若いころの面影とは違う姿に。でもそれもまた自然な変化で、落ち着いた雰囲気が年齢とともに馴染んできています。

田舎では奥さんが旦那さんにしっかり食べさせ、少し太っているくらいが安心だという文化があります。痩せてかっこよくしていると、ほかの女性に言い寄られるのではと心配になるのだそうです。古い言い回しでいえば、「女房妬くほど亭主持てもせず」なんて言いますよね。

■ 軍に入った若者たちの人生

その彼は、数年前まで軍に所属していて、モロッコに隣接するスペイン領セウタに駐留していました。田舎では仕事が少なく、軍に入る若者は少なくありません。

軍の給料は悪くなく、一財産築くには良い職業と聞きますが、派遣される地域によっては危険も多く、家族は常に心配を抱えていたはずです。

今は完全な志願制の「職業軍人」ですが、かつてスペインには徴兵制がありました。

それが廃止されたのは 2001年。私がスペインに来る少し前のことで、思ったより最近の話です。

50歳前後の村の友人は、徴兵で軍に行った経験があります。給料は本当にわずかで、仕送りをしてもらわなければならないほどだったとか。けれど、過酷な環境を共に過ごした仲間とは強い絆が生まれ、今でもスペイン各地に散らばりながら、固い友情でつながっているそうです。

一方、徴兵を逃れた人もいました。

香港で出会ったスペイン人の友人は、なんと「わざと合わない眼鏡を検査前1週間かけて乱視のようにして検査を落ちた」そうです。

また別の人は、医師の知り合いに診断書を書いてもらって免除を受けたとか。

若い世代が、それぞれの事情と向き合いながら過ごしていた時代だったのだと、今になると思います。

■ 村の仕事事情は、いつも少し複雑

話は変わって、この村の仕事事情はなかなか複雑です。

役場の正職員になれれば定年まで安泰ですが、その枠は少なく、狭き門。それ以外の多くは「2年契約」などの期間雇用で、契約と契約の間には半年ほど仕事がない期間が生まれることも珍しくありません。

夏になると、2か月ほどの“コルク採取”の仕事があります。短期間ながら良い収入になるため、多くの男性がこの季節だけ働きに出ます。

銀行勤務は担当エリアを広く回らなければならず忙しい仕事。

そして人気の高い職業といえば「学校の先生」。

ですが、この道も決して簡単ではありません。

■ スペインの先生になるということ

教員試験に合格できなければ、アンダルシア州の教員登録リストに入り、1年契約の“派遣”としてどこかの学校に配属されます。9月の学年開始の直前にならないと赴任先が分からず、働きながら次の試験に向けて勉強し続けるのは大変なことです。

経験を積むごとにクレジットが加算され、徐々に希望の地域で働けるようになる仕組み。

試験に合格すれば、晴れて安定したポジションが得られます。

コルテス村にも、その仕組みの中でこの村を気に入り、定住した先生がいます。最近家を購入し、これからもここで暮らすと決めたようです。

スペインの学校は日本ほど校則が厳しくなく、子どもたちは実に自由。

大きなピアス、タトゥー、へそピアス……高校生でも珍しくありません。

「そんなことを注意されるのは私立だけよ」と友人が笑っていました。

■ 黒いヴェールの女性と交わした、静かな挨拶

散歩の途中、全身を黒い布で覆い、乳母車を押したムスリムの女性とすれ違いました。目元しか見えないので、一瞬どうしようかと迷いながらも「オラ」と声をかけると、彼女も優しく「オラ」と返してくれました。

この村では、誰とすれ違っても挨拶するのが普通です。そんな文化が、この小さな村の温かさなのかもしれません。

■ 雲の切れ間から差す光

散歩の終わり頃、雲の隙間からわずかに光が漏れていました。

週末は晴れるらしく、その予報だけで少し気持ちが上向きになります。

午後には予報通りの雨。

けれど、重たい雲の朝を歩いたあとで感じる雨音には、どこか落ち着きすらありました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2025/12/03

12月3日(水) カラコレスとモロッコのちょっとした思い出

今朝は9時を過ぎて外へ出た瞬間、肩が思わずすくむほどの冷たさでした。

昨夜や雨と強い風で窓がガタガタ鳴り、少し不安で寝付きが悪かったのですが、朝になってみれば空はすっきり晴れ。

ちょうど正面から太陽が昇ってきて、まぶしくて目を細めたほどです。

太陽が出るだけで、気持ちがふっと軽くなるから不思議です。

散歩で出会った牛さん

排水の悪い村のつくり

散歩道の途中にはキャンピングカー用の小さなエリアがあります。

そこには水を補給したり排水したりできる設備があるのですが、昨日の雨のせいでそこに水が溜まり、どうやら排水が詰まっているようでした。

スペインの村は水回りの整備が甘いところが多く、雨水は道路の端ではなく“道の真ん中”をそのまま流れるように作られています。

この村は標高650メートルほど。

ここから坂を下っていくと川のある村に着くのですが、雨が降るとまるでそこへ向かって一本道のように水が落ちていき、強い雨の日などは本当に“道そのものが川”のようになります。

そんな光景を思い浮かべながら、ゆっくり歩いていました。

おじいさんと、巨大カラコレスの記憶

途中、足の不自由なおじいさんとすれ違いました。

愛犬を連れて散歩していた頃は毎日のように顔を合わせていた人で、夏でも冬でも変わらず歩いている姿を見かけます。

そのおじいさんといえば、夏の終わりに雨が降ったあと、岩場から出てきた巨大なカラコレス(カタツムリ)を袋いっぱいに採っていたことを思い出します。

カラコレスはこういう岩の隙間から出てきます。

このあたりのカラコレスはとにかく大きく、袋を覗き込むと “うわっ” と後ずさりしたくなるほどの迫力です。

カラコレスは砂抜きに手間がかかり、トマトなどと一緒に長く煮込むのだそう。

セビリアでは小さめのカラコレスをコンソメベースで煮たものがポピュラーで、以前そのスープを勧められて飲んだとき、角を出した小さなカタツムリが数個浮いていて、思わず息を止めて飲んだのを思い出します。

それ以来、なぜか私は「カラコレス好き」と思われてしまったようで、セビリアの友人が大量に持ってきてくれたことがありました。

内心「好きじゃないんだけど…」と思いながらも言えず、電子レンジで温め直されたカラコレスを、美味しそうな顔をしながら食べたものです。

モロッコの匂いと、旅の醍醐味

カラコレスのことを考えていたら、モロッコを旅したときの光景がふと蘇りました。

道端に大きな鍋をかけ、カタツムリをぐつぐつ煮て売る人たち。

香りは……正直、良いとは言えず、私は結局食べられませんでした。

旅先で“食べたことのないものを食べてみる”のは醍醐味ですが、勇気が必要な場面もあります。

あの日はその勇気が出ませんでした。

モロッコに寄り道したいという友人へ

昨日、日本人の知り合いが「またコルテス村に遊びに行きたい。その前にモロッコにも寄ろうかな」と話していました。

私はつい、「モロッコは慣れていないと衛生面でびっくりするよ」と言ってしまいました。

市場も、食べ物も、日本とは常識がまったく違う場所。

一番ショックを受けるのは、やっぱりトイレでしょう。

ただ、日本人向けの団体旅行なら“綺麗なところだけを見る旅”になるので、案外大丈夫なのかもしれません。

私が衝撃を受けるのは、いつも個人旅行だから。

道端の食べものも、裏通りも、生活そのままの場所に入り込むので、どうしても現地のリアルを目の当たりにするのです。

日本の常識が通じない場所

世界には、日本の感覚では通じない場所がたくさんあります。

そして、この村もそのひとつ。

排水ひとつとっても、日本ではありえないことが日常です。

でも、不思議なもので、そんな“違い”にも少しずつ慣れていきます。

慣れてしまうと、これもまたこの土地らしさの一つに思えてくるのだから面白いものです。

今日の散歩は、そんなことをぽつぽつと考えながら歩いた朝でした。

そして、午後5時半頃に雲のない空に出てきた満月。

最後までお読みいただきありがとうございました。

12月2日(火) 雲海に癒やされ、ガスストーブに泣かされる日

 今朝、いつものように窓を開けてバルコニーに出てみると、目の前が一面、真っ白でした。雨かと思ったら雨粒は落ちてこない。ただただ濃い霧が村を包んでいたのです。

しばらくすると白さがゆっくり薄れ、やがて谷のほうへと流れていき、ロンダの方向まで続く美しい雲海が姿を現しました。思わず息をのむ景色でした。

1時間ほどして外に出てみると、空は一転してグレー。その隙間からときどき青空がのぞく、なんとも気まぐれな冬の空です。

午後からは雨が降るかもしれないとの予報。風は強くはないのですが、とても冷たくて体に沁みる寒さ。厚手のジャケットを着ないで外に出たのを少し後悔しました。

ガスストーブとの再会、そして試練

12月に入り本格的に寒くなってきたので、ようやくガスストーブを使おうと思い、昨日試してみたのですが……まったくうまくいきません。

去年ストーブが壊れて買い替えたとき、想像していたものと違う商品が届いて少し揉めた末、交換してもらったのですが、その新しいストーブも結局数回しか使っていないまま一年が過ぎてしまいました。

この村で使うガスヒーターは、後ろに大きなガスボンベを取りつけるタイプ。一般家庭用とはいえ、そのボンベがとにかく重い。おそらく35キロほどでしょうか。配達員の人が家まで運んでくれるものの、そこから設置するまでがまた大変で、腰を痛めないよう細心の注意が必要です。

以前はもう少し軽いボンベがあったのですが、値段が高くなり、今では安いけれど重いほうに一本化されたそうです。村にガスを運んでくれる業者の人も、前の人は3年ほどで体を痛めて辞めてしまい、今の人も「いつまで続けられるだろう…」と思ってしまうほどの重労働です。

冬はガスの消費が増えます。ストーブもお湯もガスで賄うので、冷たい水を温めるためにガスを多く使うのです。夏はぬるい水が出てきますが、冬は本当に冷たい。

一番の難関は「取り付け」

ガスストーブには、ガスボンベの頭に取りつけるアタッチメントがあります。

日本の常識でいえば、ストーブを買えば当然その部品も付いてくるはずですよね。ところが、ここではそれが付属していないのです。

初めてストーブを購入したとき、家で箱を開けてさあ使おうとしたら、肝心のアタッチメントがない。あのときの絶望感は今でも鮮明に覚えています。

どうすることもできず、結局友人にお願いして取りつけてもらいました。

しかも厄介なのは、アタッチメントのゴム部分が冬になると硬くなり、力いっぱい押し込まないと装着できないこと。私にはどう頑張っても無理なのです。

今回新しく買ったストーブは、お店でアタッチメントを付けてもらってから届けてもらいました。

ところが、いざガスボンベに差し込もうとすると、これがまたびっくりするほど硬い。

昨年はなんとか一度は取り付けられたものの、昨日は何度挑戦してもまったく入らず。手は痛くなるし、寒さはこたえるし、気持ちだけがどんどん空回りしていきます。

「友達に来てもらうべきか…。それともガスボンベをもう一本買って、配達のお兄さんに付けてもらうほうが早いのか…」

そんなことを考えながら、ただただ途方に暮れてしまいました。

力が必要な国で暮らすということ

ここで生活していると、しみじみ思うのです。お年寄りになっていくことが日本よりずっと大変だろうなと。

コンセント一つ抜くにも力がいる。やさしく引っ張った程度ではびくともしない。差し込むときも同じで、力強く押し込まないと電気が通らない。

ドアも重いし、スーパーのカートも、車輪の動きが悪くて妙に重い。

「何でも硬い国だなあ」と思うことが多々あります。

もちろん、たまには力を使う生活も、体には良いのかもしれません。でも、昨日のように何度やってもできず、泣きたくなるような、叫びたくなるような瞬間もあるのです。

香港とここを比べて思うこと

昔、香港で働いていた頃は、通勤中にしょっちゅう舌打ちしていました。舌打ちなんて本当にみっともない行動なのですが、どうしても我慢できなかったのです。むしろ、こちらが舌打ちされることもありました。

あの街は、とにかく忙しい。周りに気を配る余裕がないほど人が急ぎ足で行き交い、ルードな場面も多く、ちょっとしたことでイラッとしてしまう環境でした。

でも、この村に来てからは、そんなみっともない癖は自然となくなりました。ここは人も少なく、生活のリズムもゆっくりで、基本的に穏やかに暮らせる田舎だからだと思います。

とはいえ、穏やかな生活の中にも、コンセントやガスの取り付けのような小さなストレスは確かにあります。

それに停電も多く、電子レンジの時計設定が毎回リセットされる。そんな細々とした面倒が積み重なると、思わず「ガオッ〜!」と叫びたくなる瞬間があるのです。

それでも心を救ってくれるもの

そんな朝でしたが、ふと外に目を向けると、バルコニーの端で雲海のタイムラプス用のカメラが静かに景色を記録し続けていました。

レンズの先には、まだ薄く残った雲海がゆっくりと流れていて、その柔らかな白さを眺めているだけで、さっきまで胸の中にあったイライラがすっと消えていくのを感じます。

やっぱり、この村はいいところです。

不便なことや力仕事に振り回される日もあるけれど、こうして自然がそばで気持ちを整えてくれる瞬間が必ずある。

今日もまた、そんなふうに救われた一日でした。




2025/12/01

12月1日(月) 冬の朝に考えた、人付き合い

12月に入りました。

今朝の空はどんよりとしたグレーで、雨は止んだものの、空気はしんと冷たくて冬が本格的に動き出したようです。曇り空の朝は、外の音がどこか吸い込まれていくようで、歩いていても妙に静かに感じます。

久しぶりにワイヤレスマイクを取り出したら、バッテリーがすっかり切れていて焦りました。まだそこまで使っていないのに故障かと思ったほど。こういう小さなトラブルがあると、なんだか年の瀬らしい気ぜわしさを感じます。

村のキャンピングカー駐車場には、今朝は2台。雨の寒い日曜日をここでどのように過ごしたのでしょうか。

私は昨日は家にこもって仕事をしていたせいもあり、なんとなく話題も少ない朝です。

■ “気軽に外へ”が減った理由

最近、気軽に「ちょっと外で一杯どう?」と言える相手が少なくなりました。

以前は、マドリッドに戻ってしまった友人が近くにいて、よくタパスをつまみに出かけたものです。家にこもりがちな冬の時期ほど、あの小さな外出がありがたかったのだと、今になって思います。

もちろん誘おうと思えば誘える友人はいます。でも、誘えば誘ったで長くなるし、話が一方通行で疲れてしまうこともある。

ただ“外に出たいだけ”の日には、それが少し重く感じられます。

気軽さって、人付き合いの中では意外と大事な要素なんですよね。

■ 会話の“相性”は重要

よく話す友人の中には、とにかくよくおしゃべりをするタイプの人がいます。こちらが返事をしようがしまいが、まるで止まらない小川のように言葉が流れてくるのです。

「聞いていればいいんだよ」と、ある動画で誰かが言っていましたが、

ときには、聞き続けること自体が少ししんどくなる会話もあります。

香港にいた頃にも、似たような友人がいました。話がぐるりと一周して何度も同じところに戻ってくるので、ランチに行くと食後にどっと疲れてしまい、「大事なお昼休みに、どうして私はこんなにへとへとなんだろう…」と思ったものです。

こちらにもおしゃべり好きな友人がいます。

数人で集まるときは楽しいのですが、二人きりになると、まっすぐこちらを見つめながら2時間も3時間も話が続くことがあって、さすがにそのときばかりは「少し休憩したいなぁ」と思ってしまいます。

■ 気の合う相手と過ごす時間

マドリッドに戻った友人とは、英語のレベルがちょうど同じくらいで、会話が心地よいテンポで続きます。

一緒にいて楽しく、かなりプライベートなことまで話せる、気のおけない友人です。お互いに英語の練習にもなるので、自然と会話が弾みます。

彼女が年に数回この村へ戻ってくるときは、私もできるだけ時間を作って会いに行きます。夜に出かけたり、どこかへドライブしたり。そのひとときが、とても好きなのです。

■ スペイン語が動き出したきっかけ

もう一人、ウェルバに住む友人がいます。

彼女と出会ったのは、この村のキノコ祭り。学校の先生として数か月だけ滞在していたときのことです。

その頃の私は、スペインに住んでいながらスペイン語はまだ入門レベルで、日常のほとんどを英語で済ませていました。

そんな私に、彼女はほぼ毎日のように「お茶しない?」と声をかけてくれました。

片言のスペイン語しか話せない私に、遠慮なくどんどん話しかけてくる。その言葉をどうにか追いかけ、少しずつ返す。

その積み重ねが、私の中でスペイン語をゆっくりと動かし始めたのです。

“話したい気持ち”が言葉を押し出してくれる。

あのときの感覚は、今でもはっきりと覚えています。

■ 今日の締めくくり

今、雲の切れ間から太陽が少しだけ顔を出しています。

冷たい朝の空気の中でも、陽の光が当たると心がふっと明るくなるから不思議です。

「私はこの何年で、何をしてきたんだろう」

そんなことを思う瞬間もあるけれど、こうして時々でも気の合う相手と話しながら、自分のペースで進んでいけばいいのかもしれません。

さて、歩いていると、友人が壁のペンキを塗っているのが見えました。

ちょっと写真でも撮ってあげようかな。

そんな、なんでもない12月の始まりです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


2025/11/30

11月30日(日) 恵みの雨とコルクの山の物語

昨日の青空が嘘のように、今日は朝から雨でした。ちょうど小雨が止んだ隙に散歩に出てみると、空はすっかりグレー。


この季節は本来なら雨の多い時期なのですが、今年はほとんど降っていなかったので、まさに“恵みの雨”です。それにしても寒い。まるで1月のような冷え込みで、季節がひと足早く進んでしまったような感覚になります。

雨のあと太陽が出れば、いつもならこのあたりのコルクの山にはキノコが生えるのですが、今年のように気温が下がり過ぎると、期待は薄いかもしれません。

■どんぐりの山で育つイベリコ豚

散歩しながら、YouTubeで見た “熊とどんぐり” の話を思い出しました。コルクの山にはどんぐりが無数に落ちていて、それを食べて育つイベリコ豚は香り豊かで、最高級の生ハムになります。

どんぐりをスペイン語でベジョータと言いいます。

日本でも熊が冬眠前にどんぐりを食べて脂肪を蓄えるという話がありますが、どんぐりの栄養価は本当にすごい。改めて「どんぐりって自然の恵みそのものだな」と感じます。

今年はどんぐりが豊作のようで、先日のハイキングでもたくさん落ちていました。YouTubeの熊の専門家によれば、豊作・不作は単なる気まぐれや、温暖化ではなく、木が自らの種を残すために行う“生存戦略”なのだとか。

不作の年は動物が飢えて数が減り、翌年の豊作では食べきれないほど実が残って発芽につながる。自然は本当によくできていますね。

■山の動物たちと狩猟のこと

このあたりの山にはイベリコ豚が放されていますが、これは耳タグで管理された家畜です。野生として暮らしているのは、イノシシ、鹿、ウサギ、キツネなど。どんぐりを食べるのは、もちろんイベリコ豚と、イノシシ、そして鹿です。

鹿は年に2回、大きな“間引き”のハンティングがあります。

通常の狩猟は村役場でライセンスを申請する必要があり、最も安いのはウサギ。鹿のライセンスは、5〜6年前の話では400ユーロほどだったと思います。もっとも、鹿に出会って仕留めるのは簡単ではないので、村人のほとんどはウサギ専門です。

一方、間引きハンティングになると、都会から裕福なグループがやってきて、鹿を追い込みながら狩ります。話を聞く限り、かなり壮絶な光景のようです。そのライセンス料は村の収入源にもなります。

「可哀想だな」と心が痛みますが、かつてこの山にはオオカミがいて、鹿の数は自然に抑えられていました。今はオオカミが消え、鹿が増えすぎれば畑を荒らす被害も出るため、どうしても人が管理せざるを得ないのです。

仕留められた鹿は獣医の検査を受けた後、食肉業者が解体し、どこかへ運ばれていきます。

この地域の鹿料理は、ほとんどが長時間煮込むシチューのようなもの。安全のためでもあり、肉質のためでもあります。イノシシはステーキなど焼く料理も多いですね。

■どんぐりの木の成長に気づく

散歩道の見晴らし台にあるコルクの木の下にも、今日はどんぐりがたくさん落ちていました。

そういえば、この木が実をつけているのを、私は今回初めて見た気がします。

植えられたのは15年ほど前。まだ5年ほどの幼木だったと思います。それが樹齢20年ほどになり、ようやく立派などんぐりをつけるようになったのだと思うと、自然の時間の流れにしみじみしてしまいます。

どんぐりにも形はいろいろで、細長いもの、丸く太ったもの、小さなもの。先日のハイキングでは、歩きながらあれこれと眺めて楽しみました。

■村の葬儀の風景

共同墓地の近くまで来ると、チャペルに人が集まっていました。誰かが亡くなられたのでしょう。

ここでは、昔は自宅で安置していたものの、今は墓地横のチャペルに十字架の下で安置され、花とキャンドルに囲まれ、人々が弔問に訪れます。夕方には葬儀があるはずです。

葬儀は教会で行われ、棺は霊柩車、または親族の男性が担いで運ばれます。その後ろに親族や村人が続き、ゆっくりと教会へ向かいます。

ミサが終わると、再び墓地まで戻ってくる――そんな昔ながらの葬送の形が、この村ではまだ残っています。

静かな村の日々の中で、こうした場面に出会うと、「ああ、今日もここで誰かの人生が一区切りついたのだな」と胸が締めつけられます。

雨が止んだ静かな散歩のつもりが、どんぐりの話から山の動物のこと、そして村の日常の営みまで、思いがけず深い時間になりました。自然に囲まれたこの土地では、季節の移ろいも、生き物の営みも、人の暮らしも、すべてがゆっくりと、同じ時間の流れの中にあります。

最後までお読みいただきありがとうございました。



2025/11/29

11月29日(土) 青空とチュロスと、金曜日の文化

今朝は、昨日に続いて風ひとつない静かな朝でした。

雲一つない青空が広がり、山の向こうまで澄みきった冬の光に包まれています。ただ、空気はぐっと冷たく、手袋なしでは指先がすぐに冷えてしまうほど。顔もひんやり、耳まで冷たくなるような気温で、冬が確かに来ているのを感じます。

昨日も良い天気だったのですが、木曜日に仕事を休んだため、金曜日は朝からバタバタ。お昼頃に友人から「バルに行かない?」と誘いがあったものの、どうしても出られませんでした。

こちらの人たちは金曜日になると、本当に仕事を早く切り上げてバルへ一直線。

このあたりでは金曜の午後は「ちょっと早めに切り上げて遊びに行く日」という雰囲気が今も自然に残っています。

日本にも似たような取り組みがありましたよね。

たしか「プレミアムフライデー」。2017年に始まった、月末の金曜日は午後3時に退社して買い物や旅行を楽しもうというキャンペーン。当時はテレビでもよく取り上げられていましたよね。その頃一時帰国していました。

その後、日本では定着したのでしょうか?
それとも死語になったのでしょうか?

スペインでは同じようなことが政策でもなんでもなく自然と文化として根づいているところに、お国柄だなあと感じます。

■ 金曜の夕方、友人たちとバルへ

夕方になると、また別の友人から連絡がありました。

「8時半にみんなで集まるから来ない?」と。

けれど彼女自身はそんな時間まで待てないと言い、先に会おうという流れに。最初は6時と言い出したので、「いやいや、2時間も待っていたら8時半には飲めないじゃない」と笑って返し、結局6時半に落ち着きました。

まず向かったのは、プール横のバル。そこでは別の友人にも久々に会えて、近況をあれこれと話すことができました。

彼は今、隣村の家でお母さんと一緒に暮らしています。お母さんは数年前にイギリスへ戻ったのですが、もう一人の息子さん家族とうまくいかず、再びこちらへ戻ってきました。

80代前半で、体は元気。普通の生活も送れるのですが、ただひとつ——

「薬を飲む」ということだけ、どうしても忘れてしまう。

1日3回の服用があるため、彼は外出していても必ずその時間には家に戻らなければならず、なかなか大変そうです。最近は記憶が少しずつ薄くなってきているとのこと。

スペインに戻ってきた直後に一度会いに行ったのですが、その後は行けていません。車で15分、信号ひとつない道の15分なので、近いようでいてつい足が向かない距離です。

彼女は私の前では、人生の先輩らしいしっかりした一面が表れ、とても魅力的な女性になります。でも息子さんの前では甘えてしまい、まるで「女の子」に戻ったようになってしまうのです。

そのあたりが、イギリスの息子さん家族とうまくいかなかった理由かもしれません。どこの国でも家族の問題はなかなか難しいものですね。

■ 村の端のレストランへ

イギリス人の友人とはそこで別れ、私たちは村のもう一つの端にあるレストラン「モンテレス」へ移動しました。

金曜の夜だというのに人はほとんどおらず、ただテーブルはきれいにセットされていたので、きっと土曜日の今日の昼にグループ客でも入ってるのだろうという雰囲気。

来週末は3連休なので、きっと皆さん外出は控えて家で静かに過ごしているのでしょう。

私は昼間にしっかり食べてしまっていたので、ビール数杯とタパスを1つだけ。

全員で6人、一人は若者の息子ちゃん、話題は自然と同年代ならではの方向へ。

■ 懐かしの「フレンズ」から、若い世代の話題まで

私が話したのは、90年代のアメリカの名作ラブコメ「フレンズ」の話。香港にいた頃、リアルタイムで夢中で観ていました。

若い世代も知っているようで驚きました。今はどこで観るのでしょうね。私はイギリスの番組をFire Stickで観ていますが、彼らはまた別の方法で楽しんでいる様子。

そこから話は広がり、

『アリー・マックビール』

『フレイジャー』

『ER』

など、昔のコメディなどの話で盛り上がりました。

当時、特に私が驚いたのは、『アリー・マックビール』のオフィスでは男女兼用トイレが普通に描かれていたこと。

「ニューヨークってそんなことになってるんだ、凄いな〜、でも私は絶対無理」、と感じたことを思い出しました。

息子ちゃんに「90年代からウォーク文化が始まってたんだね」と言われ、たしかに今思えば…と妙に納得してしまいました。

■ 若い人から学ぶ

その息子ちゃんと話していると、いつも新しい情報をもらっています。

私は最近ブログを再開しました。

愛犬が天国に行くまではほぼ毎日更新していたのですが、その後は年に数記事しか書かない年もあるほど。

「これではいけない」と思い、短時間で書ける方法を工夫しながら、また書き始めています。

ブログはBloggerを使っていますが、スマホで見るとホームに5記事のリストが表示されますが、次の矢印をクリックすると、1記事しか出ないのです。私としては5記事のリストを表示させたい。

この不便さをChatGPTに相談したことを話すと、息子ちゃんは「自分はカーサーを使ってるよ。これいいよ」と教えてくれました。

若い人と話すと、「私の時間がフレンズの時代で止まってしまっている」ことに気づきます。あの頃が一番華やかだったのも事実。でも、立ち止まってばかりはいられない。新しいものを知るのは、いつだって楽しいものです。

■ 土曜の朝はチュロス

土曜日の朝は村全体が静かで、まだみんな寝ているのでしょうか。

さっきまで冷たかった空気が、日差しで少しずつ温まってきました。

これから、温かいチュロスでも食べに行こうと思います。


最後までお読みいただきありがとうございます。

2025/11/28

11月27日(木) 15年ぶりのハイキングコースそして駅レストラン

今朝は目を覚ますと、昨日の強い風が嘘のように止んでいました。

空気はぴたりと静まり返り、11月のやわらかな光がすっと部屋に差し込んできます。風のない朝は、心まで落ち着くものですね。空を見上げれば雲ひとつない青空で、「今日は歩くには最高だ」と思わずつぶやいてしまいました。

最近、この界隈の同年代の人たちと一緒に「ウォーキンググループ」を作りました。といっても、記録を競ったりストイックに歩いたりするのではなく、景色やおしゃべりを楽しみながら、のんびり歩く“ゆるい仲間”です。

今回のハイキングは、隣村のヒメラ・デ・リバール駅からベナオハン駅までのコース。

まずは村の闘牛場に11時に集合し、マルコスの車でヒメラへ向かいました。

本来なら帰りは鉄道で戻れるのですが、マルコスは体重40キロ近い大きな犬を連れているため、列車には乗れません。昔はこっそり乗せても文句を言われなかったのに、今は規則がきびしくなってしまいました。

そのため、彼は先にベナオハン駅まで車を置きに行き、別のメンバーが彼を拾ってヒメラに戻るという、少し複雑な段取りをしていました。

思い出のコースを15年ぶりに

このコースは、実は過去に2〜3回歩いたことがあります。

一度は日本人の方と一緒に歩き、そのとき撮った古いビデオが私のYouTubeに残っています。今見るとブレブレで恥ずかしいのですが、当時は腕をガッチリ固定して、精一杯きれいに撮ったつもりでした。

あれから15年。その頃はいつも毎日大型犬を散歩させていて、体力があった頃。道中で2カ所ほど怖い細い道があった記憶がうっすら残っていますが、それも今よりずっと平気だった気がします。

今回も同じコースを歩いたのですが――

驚いたのは、道が以前より細くなっていたこと。

浸食なのか崩れなのか、小さな道がさらに細くなっている場所がいくつもあり、何度か手をつきながら慎重に進まざるを得ませんでした。

それなのに、まわりのメンバーは平気な顔でスイスイ進んでいくのです。

「みんな強いなあ」と感心しつつ、私は慎重に足場を選びながら歩きました。

イノシシの跡と、大きな鳥の影

天気はほんとうに素晴らしく、日向に出ると暑いくらい。

何人かは途中で半袖になって歩いていました。

道にはどんぐりがたくさん落ちていて、足元にはイノシシが掘り返した跡が無数に残っています。

鹿もよく出る地域で、ときどき大きな鳥が川沿いを滑るように飛んでいく姿も見えました。

自然の中を歩く時間は、それだけでちょっとした非日常になります。

すれ違ったのは3人ほど。

週末になると人で賑わう道ですが、今日は静かな木曜日。

聞こえるのは仲間の笑い声と、足音と、川の水が流れる音だけでした。

ベナオハン村に近づいてきました

ベノハンの駅レストランでランチ

無事にベノハンに到着すると、駅の古い建物を利用したレストランへ。


ここは日曜日はアラカルトのみで少し値が張るのですが、水・木・金は「メニュー・デル・ディア」があり、今日はそれをお目当てにしていました。

これが大当たり。

味も、サービスも良く、久しぶりに「満足!」と言えるランチでした。


スペインの目玉焼き+チョリソ+ポテトフライ

ビールを一杯飲んで、外のテラスで日向ぼっこをしながらのんびり。

……と思いきや、太陽が木々に隠れると一気に寒くなるので、脱いだり着たり忙しい私たちでしたが、それもまた楽しいひととき。

帰りは友人マルコスの車に乗り、途中で1人を降ろしながら村へ。

着いたら他のメンバーはバルへ行ってもう一杯飲んでいましたが、私は「今日はもう十分」と言って、少しおしゃべりだけして家に帰りました。

月一で十分…と思いつつも、楽しいから困る

もともと「月に一度くらい歩こう」という話だったのに、気づけば毎週の恒例行事に。私は仕事の時間をやりくりしながら参加しているので、毎週「1日コース」は正直少し大変です。

できれば近場を午前中に歩いて、午後からは仕事をする日も欲しいのですが……

それでも今日のような一日を過ごすと、「まあ、来週も行きたいな」と思ってしまうのです。

自然の景色と美味しいごはん、そして気の置けない仲間たち。

その組み合わせはやっぱり特別で、何度歩いても飽きません。

今日は本当に、心から楽しいハイキングデイでした。

最後までお読みいただきありがとうございます。


2025/11/26

11月26日(水) 風の強い日に、郵便局で聞いた新しい「安全グッズ」の話

今日もよく冷え込んだ一日になりました。

朝の散歩に出たときは風こそ吹いていたものの、歩いているうちに気にならなくなる程度でした。

ところが時間がたつにつれ勢いを増し、夜になった今ではビュービューと壁を揺さぶるほど。昨日の天気予報どおりとはいえ、体の芯まで冷えてきます。

郵便局へ行く朝の用事

散歩のあと、いつものように郵便局へ向かいました。私の郵便受けを確認するためと、Amazonから届いた荷物を受け取るためです。

スペインでは、Amazonの荷物は家へ届けてもらうこともできますが、私は基本的に郵便局受け取りにしています。

近くの商店だと、夜8時半くらいまで、また土曜日でも受け取れますが、何より「一番信用できる」のは郵便局。

とはいえ、郵便局は平日14時半までしか開いておらず、土日は休み。生活のリズムに合わないことも多いのですが、それでも結局ここに落ち着いています。

今日は荷物を2つ頼んでいたのですが、受け取った袋の中に入っていたのは1つだけ。よくあることなので「もう一つは後日かな」と思いながら家に戻ると、すぐに郵便局から電話がありました。

「もう一つ、こちらにあったのよ。ごめんなさい!」

そちらが楽しみに待っていた荷物なので、急いで取りに戻りました。

新しいスピーカーとの出会い

大切な荷物というのは、注文していたポータブルスピーカーです。

実は、以前使っていたスピーカーを友人の誕生日会に持って行き、バルに置いたままにしてしまったことがありました。

みんなで音楽を流して楽しんだのですが、誰も預かったり管理したりしてくれず、そのまま行方不明に。

安物だったので仕方ないとはいえ、少し残念。

そこで今回は、思い切ってワンランクいいものを購入しました。

マーシャル(Marshall)の小型スピーカーです。デザインもお洒落だし、音も想像以上に良い。これは絶対に外には持ち出さない、と固く決意しました。

ショパン・コンクールのライブ配信を聴いていたときに、やっぱり少し良いスピーカーで聞きたいな〜と思ったので、今回購入して良かったです。

また、集中したいときに流す音楽をいい音で聴けるのは嬉しいです。

郵便局で話題になっていた「三角板、もうダメらしいわよ」という話

荷物の受け取りついでに、ここ最近よく耳にする話題について郵便局の職員さんに聞いてみました。

来年から、スペインでは「車の故障時に三角板だけを使うのが“ほぼ禁止”」になるそうです。

正式には、国の交通局(DGT)が定めた法律の変更で、2026年1月1日からは三角板は完全に廃止。

代わりに GPS付き非常灯「V16」 が義務化。

使っていないと罰金の対象、という流れになっているとのこと。

この「V16」は、手のひらサイズの黄色いランプで、車内から窓越しに屋根へ置くだけで、360度に強い光を放ちます。

さらに、内蔵されたGPSと通信機能が自動的に動作し、「故障車の位置」を交通局へ送信して、他のドライバーへも共有される仕組みだそうです。

なぜ導入されたのか?

聞けば、三角板を置きに行く途中で道路に出てしまい、はねられて亡くなる事故が毎年20件以上あったのが大きな理由だとか。

・ 車を降りる

 路肩を歩く

 後方に三角板を置きに行く

この一連の動作が非常に危険で、特に高速道路では命に関わるそうです。

そのためDGTは「もう車から降りなくてもいい方法」を目指し、V16の義務化を数年前から段階的に進めてきたとのこと。

郵便局で売っているV16

郵便局では、DGTの認証済みのV16が売られていて、小型タイプが 49ユーロ、少し大きいものが 59ユーロ。

Amazonでも安いものはありますが、

「ちゃんと認証されているか分からないし、こういうものはきちんとしたところで買う方が安心」

と職員さんも言っていました。

とはいえ、49ユーロといえば今のレートだと約9,000円。

車を2台3台持っている家庭にとっては、なかなかの出費です。法律で義務化するのなら、せめて配布してほしいと思うのは、きっと私だけではないはずです。

生活の中に少しずつ入ってくる“新しい決まり”

帰り道、冷たい風に吹かれながら、

「スピーカーも買い替えたし、車の安全グッズも新しい時代に入るし、知らないうちに生活の道具は少しずつ変わっていくんだな」とぼんやり思いました。

家に戻り、マーシャルのスピーカーから流れる音楽を聞きながら、

風の音が強い夜を静かに過ごしています。

最後までお読みいただきありがとうございます。




2025/11/25

11月25日(火) 村に吹きつけた風と、スペイン全土の空模様

 今朝は昨日の雨の名残で、雲がどんよりと村を覆っていました。

雨は上がっていましたが、冷たい風がびゅうっと吹いていて、散歩に出る気分にはなれませんでした。

外に出れば耳が痛くなりそうな冷たい風の強さで、家の中から空の様子をぼんやり眺める朝になりました。

けれども、その重たい雲も10時ころにはすっかり消え、ふと気づけば鮮やかなブルースカイ。

光の色が変わると、空気まで違う季節になったように感じられます。

ただ、青空の下でも強い風は収まらず、村じゅうが一日中「ごう、ごう」と風の音で満たされていました。

木々は大きくしなり、バルコニーの鉢植えも転がりそうで、落ち着かない一日です。

■ 風は村だけではなかった:スペイン18県に警報

こういう日は、つい「この村だけが荒れているのかな」と思ってしまうのですが、ニュースを見てみると、どうやらスペイン全体が似たような天気に見舞われていたようです。

AEMET(スペイン気象庁)によると、今日はなんと18県で強風・高波・降水の警報が出ていたそうです。

特に風の影響が強いのは、カタルーニャ沿岸部、アラゴン南部、エブロ川下流域。地域によっては 時速100km/h を超える突風も観測され、交通への影響を警戒するよう呼びかけられていました。

雨の中心は北西部のガリシアで、海沿いではまとまった降水が続く予報。一方で、イベリカ山系や中央高地では、気温が低くなれば雪に変わる可能性もあるとのことです。

南部のアンダルシアも例外ではなく、地中海沿岸では風と波が重なり、海辺を歩く人には注意が促されています。晴れている地域でも、風が強くてなかなか“穏やかな天気”とは言えない1日だったようです。

村の空が青空に戻っても風だけが残った理由は、こうした全国的な前線の動きが背景にあったのでしょう。

■ 明日のスペイン:まだ油断できない空模様

そして、明日のスペインも、どうやら気が抜けないようです。

例えばタラゴナ県では、海岸波浪と強風の警報が引き続き発令され、浜辺を歩くには注意が必要とのこと。

ガリシアのビゴでは、朝から雲が広がり、午後には雨の可能性。

内陸の高地では、冷え込みが強まれば再び雪や凍結の心配も出てきます。

夜から明け方にかけて気温がぐっと下がる場所も多いため、体感温度は今日より一段と冷たく感じるかもしれません。

■ 冬の入口で足踏みするスペイン

こうして見てみると、スペイン全体が冬の入口で足踏みしているような雰囲気です。

晴れても油断できず、雨が降ったかと思えば風が強まり、場所によっては雪の気配さえ漂う。そういう移ろいやすい季節が、今日の村の空にもそのまま現れていたのでしょう。

明日は少し暖かくして外に出ようと思います。風の強さに負けず、青空の時間をうまく拾って、冬の始まりをもう少し楽しめたら良いのですが。

最後までお読みいただきありがとうございます。