バルコニーに出ると、澄んだ青空と雲海。
朝9時40分ごろ、厚手のジャケットを着て外に出ました。今日はそれが正解でした。冷たい風が強く、顔に当たる空気はきりりとしています。それでも不思議と不快ではなく、むしろ目が覚めるような心地よさがあります。冬の冷たさにも、種類があるのだなと思います。
天気予報では一日曇りと言っていましたが、この時間はまだ青空が広がっています。谷あいには雲海が下りていて、その雲が少しずつ持ち上がり、やがて村のほうへ流れてくるのが見えます。きっとこのあと、空は雲に覆われていくのでしょう。
明日は雨の予報。それでも、今この瞬間の澄んだ青と冷たい空気の中を歩く散歩は、やはり気持ちがいいものです。
道すがら、犬を散歩させているおじさんを二人見かけました。小さなミニチュアダックスフンドがいて、例によって誰にでも吠えます。吠えられるたびに、思わず苦笑いしてしまいます。
霧の中を走る列車に思う
雲海は谷を流れる川に沿って広がり、反対側の斜面まで白く包み込んでいます。その谷底を鉄道が走り、今日はきっと車窓からの景色は望めないでしょう。列車は霧の中を、ひたすら進んでいくはずです。
この路線はディーゼル列車で、港町のアルヘシラスから内陸へと伸びています。かつては グラナダ まで一本で行けたのですが、今はアンテケーラで乗り換えが必要になりました。高速鉄道が整備される一方で、古い路線は役目を終えつつあります。
この鉄道はもともと、19世紀末にイギリス資本とジブラルタルの富裕層によって敷かれたと聞きます。夏の暑さを逃れ、山へ向かうための路線だったそうです。
さらに、マドリードからアルヘシラスまで列車で行き、船に乗り換えてニューヨークへ渡るという、壮大なルートも存在していたとか。今では貨物列車が主役となり、港で下ろされたコンテナが長い編成で運ばれていきます。
現在、旅客列車は一日わずか3本。かつては ロンダとの間に朝夕の便があり、通勤にも使えましたが、今はずいぶん不便になりました。結局、この地域では都市間移動はバスのほうが現実的です。
スペインの鉄道は、日本のように分単位の正確さを期待すると痛い目に遭います。10分の乗り換えなど、まず無理。1時間くらいの余裕がないと、安心して予定は立てられません。
散歩のつもりが、バルへ
「今日は散歩だけで帰ろう」と思っていたはずなのに、気がつけばいつものバルに立ち寄っていました。
モジェテというパンのトーストにトマトをすり込み、オリーブオイルをかけ、生ハムを挟んだ一皿。コーヒー付きで5ユーロ。数年前は3.5ユーロほどだったので、ずいぶん高くなりました。円安も重なり、日本円に換算すると倍以上の感覚です。
それでも、ここのバルのトーストはやはり美味しい。焼き加減が絶妙で、つい納得してしまいます。
転ぶこと、歩くこと
相席になった女性はマドリード出身で、90歳を超えるお父さんの世話のため、村に移り住んできたそうです。以前はとても活動的だったお父さんも、転んで腕を痛めて以来、歩くのが怖くなってしまったと言います。
その話を聞きながら、私自身の転倒の記憶がよみがえりました。
雑貨店の中で急いでいて物に引っかかり、肘から堕ち、全体重が肘に乗ってしまったこと。
空港で靴ひもが引っかかり、転倒して腰を打ったこと。
どれも大事には至りませんでしたが、年を重ねると治りが遅く、後に残るものです。
若い頃は、スポーツで転んでも平気でした。それが今では、「転ぶ」ということ自体が怖くなります。
それでも、高齢になればなるほど歩かなくなってしまうのは、もっとよくありません。だからこそ将来を考えて、これからはより気をつけながら、しっかり歩いていこうと思うのです。
冷たい風の朝、雲海を眺めながらの散歩は、そんなことを静かに考えさせてくれました。
最後までお読みいただきありがとうございました。







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